企業の防災意識指標の1つに
従業員の「家庭内備蓄」を
「くじ引き演習」など、独自のユニークなBCM(事業継続マネジメント)を展開する株式会社ディスコBCM推進チームリーダーの渋谷真弘氏は、「これからのディスコの指標の1つに、従業員が家庭内でどれだけ備蓄をしているかを取り入れていきたい」と話す。
従業員の防災意識が高まれば、自然と家庭内の備蓄にまで及ぶはずであり、それが翻って企業の事業継続力を向上させるという考えだ。家族を守れない人に組織を守ることはできない。ここで、家庭の備蓄について考えてみたい。
地震が発生した場合、家庭でもっとも重要なことはまず「家が倒壊しないこと」だ。阪神・淡路大震災では地震発生から2週間の間に被災地全体で約5500人が亡くなったが、神戸市の監察医が神戸市内で亡くなった犠牲者の死亡推定時刻を調査した結果、実に9割以上が、地震が発生してから5分~15分の間で死亡したことが分かっている。すべて、家屋が倒壊したり家具の下敷きになることによる「圧死」によるものだ。備蓄の前に、家庭でもっとも大事な防災対策はまず「耐震補強」であることが分かる。しかしここでは、家屋の倒壊は免れたとして、在宅避難する場合の備蓄について考えたい。
東京都は2015年5月29日、「自然災害に備えた自宅での備蓄について~都民の備蓄推進プロジェクトの展開~」を発表した。それによると、家屋が倒壊するなどして避難所で生活する人は220万人とされ、そのほか約1000万人は在宅避難で数日間しのぐことが大前提となっている。このプロジェクトでは「ローリングストック」を推奨している。特別な備蓄品のみで備えるのではなく、可能な限り家庭内で日常使いするものを普段から少し多めに購入し、日常の中で消費しながら備蓄する考え方だ。
地震が発生し、家屋が倒壊しなかったとして最も生活に不自由するのはライフラインの途絶だ。現在の想定では、首都直下地震などでライフラインが被害を受けた場合、被災前の95%まで回復するためには電力7日間、通信14日間、上下水道30日間、都市ガスは60日間かかると算出されている。東京都がモデルケースとして挙げている家庭内の備蓄品は以下のようなものがある。