もちろん、これらすべてを常時携帯するのは現実的ではない。自分にとって何が必要かはそれぞれの立場によって異なるため、まずは自分が必要と思う物を考えることが必要だ。すべてバッグに入れていても、たまたま持ち歩いていない時に被災することもあり得る。ビル内での移動時に、エレベーターの中で数時間閉じ込められたらどうするか?

 例えば、バッグの中に入れておくものとは別に、財布の中にビニール袋をたたんで入れておく、停電に備えてキーホルダーや携帯に笛やLEDライトをつけるだけでも最低限の対策は可能になる。

 日常的に使うものと併用することで量を軽減することも考えられる。例えば最近では業務用のICレコーダーにラジオが付いているものもある。LEDライトは小型でも性能がいいものも出ているし、スマートフォン用のモバイルバッテリーに非常用LEDライトが付いたものもある。このように、なるべく普段使いしている物のなかで、少しずつ防災を意識して選択することが長続きする秘訣と言える。

 持ち運びしやすい携帯備蓄の例として、例えば黒いビニール袋があげられる。災害時にエレベーターに閉じ込められた時には、排泄物をその中に入れておくことができる。レジ袋も簡単に携行できるが、これも使いようによっては止血にも使えるほか、三角巾としても使用できる。乳幼児を連れている場合であれば、タオルやハンカチと組み合わせて簡易のオムツを作ることもできる。

「家族の写真」は、危機管理教育研究所の国崎信江さんのすすめによるもの。被災して家族と離れ離れになってしまった場合、写真を持っていれば「この人を探しています」と言いやすく、家族を探せる可能性が高くなる。携帯電話に写真を納めている方も多いかもしれないが、やはりバッテリーが切れやすいのでプリントされているものを携帯していた方が無難だろう。また、普段から子どもの写真を持ち歩いていれば、迷子になったときなどにも活用出来る。気軽にできる備蓄品の1つとしてお勧めしたい。

 もちろん、個人用の「携帯備蓄」にも正解はない。毎日の生活のなかで、災害時を想像しながらすこしずつ中身を見直し、何よりも「継続する」ことが重要なのだ。

災害用の備蓄品は定期的な「見直し」が欠かせないリスク対策.com編集長の大越が普段持ち歩いている携帯備蓄品。内容は常に見直している Photo by Satoshi Okoshi