ただし、筆者として少ないと感じるのは簡易トイレの個数だ。マンションなどでは水を備蓄しておいて流せば、トイレの問題は解決できると考えている人がいるが、排管の被災状況によって水が流せない場合も多い。
一方、企業と違い、家庭であれば家族分の簡易トイレの保管場所を取ることは難しくない。トイレを我慢することは人体に深刻なダメージを与えるため、できれば1人1日8回分は用意してほしい。人間は寒くなると頻繁にトイレを使用する。例えば暖房が停止した屋内、吹きさらしの屋外であれば少なくとも3時間おきに尿意・便意が訪れる可能性がある。この傾向は昼夜関係なく、高齢者になるとこの数はさらに多くなる傾向にあるという。
東京都のモデルケースの場合、乳幼児はおむつでよいとして、大人3人が1日8回使用すると計算して、3日分で50回分を用意しておけば安心感は増す。単純計算すると72回だが、小便1回だけで簡易トイレを1つ使いきることはない。簡易トイレは水分に関して非常に効率良く吸収するので、小便だけであれば2~3回は問題なく使える。現在は2台トイレがある家庭も珍しくないので、大便用と小便用を分ければさらに効率良く使用できるだろう。家族で、自分の家に合った災害時のトイレの使用法について話し合ってほしい。
停電が発生した時の冷蔵庫を使う技も紹介しよう。地震により停電が発生した場合、長期に渡る可能性がある。この時に、身の安全が確保できたら冷凍室にあるものを全て冷蔵室に入れ、ガムテープなどで一旦封じてしまう。冷凍された食材を冷蔵庫に入れ、さらに冷蔵庫内の気密性を上げることで、夏場であっても1~2日は冷蔵庫内の冷気が保持される。初めの2日は備蓄食料でしのぎ、その後、冷蔵庫内の食料を消費するのだ。その時までには冷凍食料も調理がしやすくなっているだろう。
東京都では11月19日を「備蓄の日」に定めている。年に1度は、家庭でぜひとも備蓄について話し合い、見直してほしい。