コーポレート・ガバナンスの失墜。
社外取締役の義務づけは有効か

 オリンパスのような事例が起こると必ずコーポレート・ガバナンスの強化が叫ばれる。識者によって論点は各々だが、一般的には「法による社外取締役の義務づけ」が提起されることが多い。この主張は正しいだろうか。

 確かに一般論としては、「社外取締役の義務づけ」は正しいように思われるが、そもそも会社の業務を理解できない社外取締役に経営のチェック機能が果たせるだろうか。現にオリンパスには3人の社外取締役がいたのだ。

 私見では、社外取締役を義務づけると同時に、その社外取締役が会社の業績を確実にチェックできると判断した具体的な事情(適性)を詳しく強制開示させるべきだと考える。たとえば、会社のすべての業績は、最終的にはB/S、P/L、キャッシュフロー表等の財務諸表に現わされる。会社の業績は数字なのだ。極論すれば、財務諸表が読めない人は、会社の経営をチェックすることができないのだ。社外取締役の義務づけは、社外取締役のいわば強制的な適性チェックの制度化とセットでなくては、あまり用を為さないであろう。

 また、社外取締役のほとんどは、一ヶ月に一度ぐらいしか会社に姿を見せない。業務執行のチェックという観点からすれば、会社に常駐する常勤監査役の機能強化の方が、はるかに実効性が高いのではないか。

 そもそも監査役の本質的な役割は、社長をはじめとする(執行)役員のコンプライアンスをチェックすることにある。しかるに日本の多くの企業では、監査役を取締役になれなかった人の処過の場として考えたり、取締役の退任後のポストとして捉えたりしているケースが多々見受けられる。立派な大企業でも、社長に自由に会うことすらできない常勤監査役が普通にいたりする。

 これでは、社長をはじめとする(執行)役員のチェックができるはずがない。常勤監査役を選任する際には、社長を含む(執行)役員に自由に会って自由に物が言えると言う具体的な選任理由(適性チェック)を同様に強制開示させるべきだと考える。