総選挙で歴史的大勝利を収めた民主党が政権発足準備を行っている。その焦点は「国家戦略局」だ。首相直属の機関を新設し、予算の骨格や重要政策、国家ビジョンを策定する。そして、省庁間や政府内の政策調整も官僚ではなく与党政治家が行うという。今回は、「国家戦略局」による民主党の予算編成作業を検証する。

 国家戦略局は、国家戦略相とこれを補佐する中堅国会議員5人と、党の政策立案スタッフら約5人、それに10人程度の経済・財政、外交、社会保障などの専門家による有識者会議で構成される。一方で、官僚は準備室に登用せず、各省庁との「連絡係」とする。

 民主党は、自民党政権下の予算編成を「官僚丸投げ」と批判してきた。経済財政諮問会議は予算の方向性を提示してきたが、個別施策の予算の数値は財務省と各省庁の間で決められてきたからだ。新設の国家戦略局では、ガソリン税(揮発油税)などの暫定税率廃止や「子ども手当」創設などの個別施策をトップダウンで決定することを狙っている。

「国家戦略局」による
予算編成の問題点

 民主党の「国家戦略局」構想が実際の予算編成過程で機能するかどうか。自民党政権下の経済財政諮問会議と比較し、(1)メンバー構成(2)事務局体制(3)省庁との関係、の3つの観点から考えてみる。

(1)メンバー構成:
 経済財政諮問会議は首相を議長とし、内閣官房長官、経済閣僚、日本銀行総裁、そして民間有識者4人で構成されていた。また議題によっては他の閣僚も臨時委員として会議に加わることができた。メンバー構成そのものは、国家戦略局と大きな違いはないと考える。

 ただ、岡田克也民主党幹事長が日本経団連など経済団体の代表は参加させない考えを表明したこと、構造改革に加わった「御用学者」は一掃されるだろうこと、そして現在、コンサル系の若手からの民主党に対する売り込みが激しいことなどから、有識者会議の顔ぶれはこれまでとガラリと変わる可能性がある。
 
 この有識者会議が「国家戦略局」が機能するかの1つのポイントである。特に、新しい有識者が大所高所から助言できるか。例えば、安倍内閣の「教育再生会議」では、新しい有識者が多く加わったが、芸術家は芸術の、スポーツ界代表はスポーツの効果を説くなど、とても大所高所の議論とは言えなかった。また、官僚からの「ご説明」への対処に慣れていないことも懸念材料だ。「ご説明」を受けて官僚擁護に豹変する有識者は少なくない。官僚と有識者の接触制限も検討が必要かもしれない。