非上場スタートアップのほうがガバナンスは利いている?

村上:上場したときに変わるものって、ガバナンス、ファイナンス、コンプライアンス。この3つとも日本の経営者はすごく苦手なケースが多い。コンプライアンスだけは上場の前に一定程度は手当されているんだけど、ガバナンスとファイナンスは苦手なまま。ようやくコーポレート・ガバナンス・コードっていう話が始まって、ガバナンスは少しずつ変わるモメンタムが出たけどまだ道半ば。少し言い過ぎかもしれないけど、ファイナンスは議論にもなってない、という感じがしますね。

小林:朝倉さんは非上場のほうがガバナンスが利いているってよく言うよね。

朝倉:非上場スタートアップの経営者って、直接VCから資金を調達して、なおかつそうした投資家から社外取締役やオブザーバーを迎えてるじゃないですか。毎月の役員会や経営会議でそうした人たちと顔を突き合わせながら議論をしていたら、投資家のことも考えなきゃと思うのは極めて自然なことやろと。

 逆に上場してしまうと、株主と顔を合わせるのもIRのインタビューを除けば総会のときくらい。株主も入れ替わり立ち替わりだし、株主総会で生産的な議論ができないと、株主の目線も意識しなくなってしまいがちなのかなと。その意味では、上場間もない会社よりも非上場の段階のほうが、実はガバナンスは利いているんでしょね。

小林:顔の見える株主の話だったら真面目に聞きたいけど、どこの誰だか分からない株主の話なんか聞きたくない、という心理は誰しもあるやろうしね。CapitalとかFidelityみたいな、存在感があって顔の見える長期投資家が入ってると違うんやろうけど、上場直後はそういうしっかりした機関投資家がなかなか入ってこない。短期で売買する顔の見えない相手があれこれ言ってるだけだと、経営者も滅入ってしまうのはよく分かります。

非上場会社のほうがガバナンスが利いてしまうのはなぜか<br />【ポストIPOについて Vol.6】朝倉祐介  シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。


非上場会社のほうがガバナンスが利いてしまうのはなぜか<br />【ポストIPOについて Vol.6】村上 誠典  シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県姫路市出身。東京大学にて小型衛星開発、衛星の自律制御・軌道工学に関わる。同大学院に進学後、宇宙科学研究所(現JAXA)にて「はやぶさ」「イカロス」等の基礎研究を担当。ゴールドマン・サックスに入社後、同東京・ロンドンの投資銀行部門にて14年間に渡り日欧米・新興国等の多様なステージ・文化の企業に関わる。IT・通信・インターネット・メディアや民生・総合電機を中心に幅広い業界の投資案件、M&A、資金調達業務に従事。


非上場会社のほうがガバナンスが利いてしまうのはなぜか<br />【ポストIPOについて Vol.6】小林 賢治  シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県加古川市出身。東京大学大学院人文社会系研究科美学藝術学にて「西洋音楽における演奏」を研究。在学中にオーケストラを創設し、自らもフルート奏者として活動。卒業後、株式会社コーポレイトディレクションに入社し経営コンサルティングに従事。その後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、取締役・執行役員としてソーシャルゲーム事業、海外展開、人事、経営企画・IRなど、事業部門からコーポレートまで幅広い領域を統括する。

*次回【ポストIPOについて Vol.7】「スタートアップは上場後に二度死ぬ?」に続きます。
*本記事は、株式公開後も精力的に発展を目指す“ポストIPO・スタートアップ”を応援するシニフィアンのオウンドメディア「Signifiant Style」で2017年9月19日に掲載された内容です。