こういった事例をビジネス雑誌などから拾い集め、補強的なインタビューも行いながら結局スキーマ・チェンジを題材にして、私は1章分の原稿を書きました。

 そうしたところ、なんと驚いたことに、それを読んで、この方法を取り入れて社内変革をしたいという会社が現れたのです。その会社の社長自らが共感してくれました。結局その会社の組織改革の仕事を足掛け5年かけてやらせてもらいました。それは私にとって初めての本格的な組織開発の仕事でした。

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 当然、近接領域である組織・人事制度提案もさせていただきました。実は私が企業の人事部の人と出会って一緒に仕事をさせてもらったのはその時が最初でした。

 全く未知の領域に進む時であっても、頼りになるのは自らの経験と知識です。異なる領域であっても応用の効く考え方はあります。

 例えば「ダイバーシティ」の本質を理解するために、私が用いたのは認知論の概念でした。なぜ、人は異質のものに拒否反応を示すのか。これは「組織がイノベーションを受け入れない時と同じだ」と気づいたわけです。その観点からダイバーシティを語ると、今までのこの分野の識者たちとは少し異なる切り口になり、斬新に見えたのも事実です。全くの素人が切り口を変えて見せることで存在感を示すことができたわけです。

 コツコツと積み上げるのではなく、一気に進む、大切なのはそのための仮説力と応用力です。どんな分野も、それが狭い専門領域だとは考えないことです。いささか荒っぽい方法ですが、そうでなければ超速で最先端にキャッチアップしたり、自らリードしたりすることはできません。いつまで経っても先駆者にはなれません。「才覚」とはたぶん、そうした勇気を言うのではないでしょうか。

 30代であれば、まだ知っていることのほうが少なくて当然です。そんな時に、何らかのオファーが来たとします。自分にとってそれは未知の領域だからとためらっているようでは何も始まりません。若いうちから「自分の島はここです」と言ってしまうのでは、いつまで経ってもトップランナーにはなれません。どうか、山っ気を大切にしてください。

(明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科教授 野田 稔)