ここ数年、同社はMMAだけで年間数百億~1000億円の利益を稼いできた。MMAは、透明で退色しにくいアクリル樹脂へと姿を変えてから、水族館にある大型の水槽や各種の屋外看板、デジタル機器の表示板、筆記用具などに使われており、新興国でも人気が高い。

 原料としてのMMAは、旭化成、住友化学、三井化学なども扱うが、あくまで石油化学製品の一品目にすぎず、特別扱いはしていない。

 ところが、09年にMMAで世界トップだった英国の有力メーカーを買収し、約40%のシェアを握る三菱ケミカルは、「第3の製造法」(新エチレン法。先行する複雑な二つの製法と異なり、直接、原料を取り出す。原価は約半分になる)を武器に、欧州、北米、アジアと広域展開する。その上、最も原料が安いサウジアラビアで新型設備を試運転中で、シェールガスに沸く米国では22年以降の新規稼働を目指して事業化調査を続ける。

 三菱ケミカルは、かつてプラスチックの原料(高純度テレフタル酸)での価格競争に耐え切れず、中国と中国メーカーに牛耳られたインドから撤退した──。

 MMAの領域においても、いずれ中国メーカーが伸びてくるはずだが、その前に意図して中国以外の国々に分散させてきた計9カ国の地産地消ネットワークで、市場の主導権を手にできるか。中国にMMA工場を持ちながら、世界に包囲網を移す三菱ケミカルの動きは興味深い。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)