働かないという人がいてもいい

「誰もが最低限の生活を送るために、すべての国民に最低限の収入を補償する」

 これはベーシックインカムの考え方で、ここ数年、議論が行われるようになりました。

「最低の生活ができることで、人は安心して本当に自分がやりたい仕事に挑戦できる」
「仕事をしたくてもできない人の所得補償になり、人が最低限生きていくためのセーフティーネットができる」

 肯定的な意見がある一方で、このシステムに危惧を表明する人もいます。

「所得が補償されてしまうと、生活レベルを下げて働かなくていいと考える人が増えてしまう。仕事に対するモチベーションが下がり、労働人口の減少に拍車がかかる」

 倫理上の問題も指摘されています。

「いくら生活レベルを落とすとはいえ、他人が払った税金に頼って暮らす人がいていいのか。働かないことで、こころが荒んでしまうのではないか」

 こうした倫理面からの指摘に対して、働かなくていいなどと考える人はいないと主張する勢力もあるといいます。

 その人たちの言い分は、人は誰かの役に立ちたいと考えるはずだから、仕事をしないで自分のためだけに生きる人はいないというものです。

 しかし私は、働かない生き方を選択する人もいるのではないかと思います。極論すれば、仕事をしないで自分のためだけに生きる人がいても構わないと思います。

 仕事をするにしても、人は、必ずしも人の役に立ちたいという動機づけがあるわけではないと考えているのです。