どちらの業界も既存ビジネスの成功体験から抜け出せず、環境変化を否定的かつ楽観的にとらえ、「まだいける」という判断ミスと、機会損失を生んだ。これらの蓄積が構造不況につながり、産業衰退を引き起こしたと言っては言い過ぎだろうか。

 筆者には、前述のような自動車業界におけるメディアの楽観的かつ現状肯定的な論調が、かつての出版業界や家電・電子機器業界の声と、どうしてもかぶって聞こえてしまう。

業界が思っているほど
参入障壁は高くない

 ならば、ゆでられたカエル側の視点で、なにか教訓はあぶりだせないだろうか。

 クルマづくりは無数の部品と多数のコンポーネントの組み合わせだ。単に組み立てるだけでなく完成品としてのバランスと協調は、モーターやバッテリーを調達できる程度では、難しいという意見がある。つまり、大手自動車メーカーにだけクルマ作りの素地があるという見解だ。

 これに対しての反論はテスラの例がいちばんわかりやすい。テスラは生産体制や品質にトラブルは見られるものの、着実に課題に対応している。

 自動車業界が思っているほど、すでに自動車という製品は特殊なものではないのかもしれない。日本ではGLM、クロアチアのリマック・アウトモビリといったEVメーカーの例もある。スーパーカーばかりではない。小型モビリティのEVメーカーは国内外に無数に存在する。その中には大手メーカーをスピンオフしたエンジニアがかかわっていることもある。

 確かにメルセデスやトヨタのようなクルマは作れないかもしれないが、大手完成車メーカーもすべて独自技術で成立しているわけではない。関連する無数のサプライヤーやパートナーの分散したノウハウは無視できないものだ。

 したがって現在、世界の主要メーカー以外はクルマが作れない、というのは驕り以外のなにものでもない。