既存の市場や価値観を全く異なるものに変えてしまう起業家や企業は「創造的破壊者」と呼ばれる。最近の創造的破壊者にはどんな傾向や特徴が見られるのか。米国のニュース専門放送局CNBCが発表している「創造的破壊者」のグローバル企業リストを見て、解説してみよう。(アクセンチュア マネジング・ディレクター 中野豊明)
ビジネスの枠組みを変える
創造的破壊者とは
少々古い話で恐縮だが、昨年大ヒットしたシン・ゴジラでは、映画の中でリアルに再現された街並みから職場や自宅など自分に所縁のある建物がゴジラに破壊されることを期待して観る人が少なからずいたそうだ。
映画という仮想的な空間だからこそ、破壊という背徳も心置きなく楽しめたのだろう。一方で、正直に明かせば、私は、古い慣習や硬直的な状況を自ら、あるいは別の誰かが粉砕することでスカッとした気持ちになることが度々ある。
新しい何かを始めるには過去を破壊するか、まるで無視することも時には必要ではないかと思うのだ。
最近、顧客との打ち合わせの場で「創造的破壊者(Disruptor)」という言葉をよく使うようになった。実は、この経済用語の歴史は古く、100年余り前から使われているものである。しかし、その定義は色あせることがない。
例えば、100年前、自動車を発明した人は偉大ではあるが、「創造的破壊者」ではない。これに対し、T型フォードをベルトコンベアによって大量生産することで自動車を消費者にとってより身近な製品へと変革させたフォードが「創造的破壊者」だと言われていた。
即ち、「創造的破壊者」とは既存の市場や価値観を全く異質なものへと変革してしまう、“異能の持ち主”を指す言葉なのである。