IoTとシェアリングエコノミーはどちらも注目のキーワードであるが、これら2つは一見あまり関係がないように見られている。しかし、今まさに始まっているデジタル産業革命によって作り出されていく世界を想像すると、これらが共に重要な要素であるとともに、互いの組み合せによって相乗効果がもたらされることがわかる。
デジタル産業革命の到来
現在が、経済・産業における大きなパラダイムシフトの入り口であるということは、日本国内ではまだ十分に認識されているとは言い難いが、欧米(特に米国およびドイツ)では、政府、企業、各種業界団体などは着々と準備を進めている。
これから起こる変革を、インダストリー4.0やインダストリアル・インターネットの動きをこれまでインターネットの普及を中心としたIT革命と区別して「第四次産業革命」と称する場合もあるが、情報通信技術を核とした変革という点でこれらを延長線上の出来事と捉え「第三次産業革命」と呼ばれることもある。そこに論点を置かないため、ここでは便宜的に「デジタル産業革命」と呼ぶこととする。いずれにしても、資本主義市場経済と持続的再利用型経済を組み合せたハイブリッド型の経済社会へのシフトを意味する。
第一次・第二次産業革命が作り上げてきた工業化によって形成されたコミュニケーション、エネルギー、輸送の様式は、中央集中型で専有的なものであり、規模の経済によって効率と生産性を高めることができてきた。しかし、その最適化には限界が見えてきたことに加えて、デジタル技術の進展によって物理的な制約を排除した、新たな経済活動が可能となりつつある。第三世界を含むグローバル化による延命の道は残されてはいるものの、需要拡大に支えられた資本主義市場経済には陰りが見え始めている。
今後30年から40年を経て、物理から仮想へ、製品のスマート化、所有から共有へ、資源の循環・再生への移行がさまざまな分野で進み、オープンで分散(P2P)型の限りなく費用がゼロに近い共有型の経済システムが形成されていくことが予想され、これを持続的再利用型経済と呼ぶ。一方、モノを生産し消費することで富を得る資本主義市場経済が完全に消滅するわけではない。すなわち、デジタル産業革命によって資本主義市場経済と持続的再利用型経済が組み合わされたハイブリッド型の経済社会へとシフトしていくことを意味する(図1)。