新しい経済動向として、「シェアリングエコノミーの拡大」ということが言われる。ただし、シェアリング自体は昔からあった。最近生じている変化は、市場情報の不完全性が克服され、需要と供給が結びつきやすくなったことだ。これによってシェアリングが新しい段階に入っている。このような変化を生かせる社会制度の改革が必要だ。

シェアリングの新たな段階
「個人が供給者」になりつつある

 シェアリングエコノミーの例として、ボストンで2000年に創業した世界最大のカーシェアリングサービス「Zipcar」(ジップカー)がしばしば挙げられる。日本でも、同様のサービスとして、「タイムズカープラス」が登場している。サンフランシスコでは、「Bay Area Bike Share」という自転車のシェアリングサービスもある。

 これらは、抽象的に言えば、耐久消費財や資本ストックを「所有するのでなく、複数の人々が利用する」という仕組みだ。こうしたものは、昔からあった。

 その典型例として、ホテルやタクシーがある。これらはシェアリングサービスの一種と考えられる。ただし、こうした古典的シェアリングの場合、供給者はそれを専門的に行う業者であった。

 現在起こりつつある変化は、情報技術の進歩によって、供給者の範囲が個人に広がりつつあることだ。

図表1には、このことを、リゾート地の宿泊施設について図示した。

「シェアリングエコノミー」に取り残される日本

 まず、Aの「別荘」は、所有する形態だ。それがBの「会員制リゾート」になると、宿泊施設という資本ストックがシェアされることになる。ここでの変化は、「所有から利用へ」だ。Cはホテルであり、Bに比べて契約期間が短期化し、フレキシブルなものになっている。

 Dは、Airbnbなどによるサービスだ。ここでは、供給者が事業者でなく個人になる。スマートフォンのアプリを通じて市場情報の不完全性が克服されたため、供給者の範囲が広がったのである。