好きなことを真剣にやると人生につながる
「ところで、放送大学には入学したんか?」
「はい」
「そうか。それはよかったな。何、専攻してるんや?」
「『心理と教育』コースを選びました」
「そういうテーマが好きなんか?」
「ま、何となく」
「そうか。好きなんやったら、それが一番ええわ」
オレにとっては結構、大きな決心だったので、それなりのリアクションを期待していたが、そうでもなく、拍子抜けした。
放送大学というのは、10代から90代までの幅広い年齢層が全国で9万人以上も学ぶ大学で、日本における生涯学習の中核を担うことを目指して設立された。今までに100万人以上の卒業生を送り出してきた。
基本は、ラジオ、テレビ、インターネットを使った授業で、自分のペースで学べるシステムだった。「生活と福祉」「心理と教育」「社会と産業」「人間と文化」「情報」「自然と環境」の6つのコースが用意されていて、特定の科目だけを履修することもできたが、オレは、大卒の資格を取得することにした。
何より授業料が魅力で、卒業までの4年間で、約70万円で済むようだ。
家族に立三さんや放送大学のことを話した時、「その時、その時、『これかな』と思った好きなことを真剣にやってみることは大切だ。それが不思議につながるのが人生だと思う。そうしたら自分にちゃんと返ってくるよ。人生ってそんなもんだと思うよ」と親父は言っていた。
「親父が『好きなことを真剣にやると、不思議と人生につながる』って言ってました」
「親父さん、ええこと言うな。そのとおりなんや」
親父のことを褒められて、オレは嬉しかった。