メモを取りまくり、自分で調べる

「あとな、何の話を聞いてもメモを取れ。取って、取って、取りまくれ。成功するまでメモを取りまくってた人が、メモをとらなくなってから経営がうまくいかなくなった、という話は一杯ある。メモを取っている間は大丈夫や。たとえ成功しても、メモを取り続けるんや

「成功してもですか?」

「そうや。失敗したくなければ、それしかない」

「はい、わかりました」

「今日、君はマイケル・ポーターを知ったやろ」

「はい」

「ポーターの経営戦略がどんなものか、何となくわかったよな」

「はい」

「今はインターネットがあるから、キーワードがわかれば何でも調べられる。読むべき本もわかる。本は書店で売っている。興味があるのなら、あとは自分で調べたらいい」

武道の師匠のように、立三さんは甘やかさない。

「じゃあな」と言って立三さんが出ていったあと、オレは1人、ドトールに残って、スマホでマイケル・ポーターの著書を調べた後、近所のブックファーストに出かけ、分厚い本を3冊買って、家に戻った。

(つづく)

●著者:さかはらあつし
作家、映画監督、経営コンサルタント 1966年、京都生まれ。京都大学経済学部卒業。(株)電通を経て渡米し、カリフォルニア大学バークレー校にて経営大学院にて修士号(MBA)取得。シリコンバレーで音声認識技術を用いた言語能力試験などを行うベンチャー企業に参加。大学院在学中にアソシエートプロデューサーとして参加した短編映画『おはぎ』が、2001年カンヌ国際映画祭短編部門でパルムドール(最高賞)受賞。帰国後、経営コンサルティング会社を経て、(株)Good Peopleを設立。キャラクターの世界観構築など、経営学や経済学だけでなく、物語生成の理論、創造技法や学習技法を駆使した経営支援、経営者教育を手がけている。著書は、『プロアクティブ学習革命』(イースト・プレス)、『次世代へ送る〈絵解き〉社会原理序説』(dZERO)ほか。映画は、初監督作品の長編ドキュメンタリー『AGANAI』の公開に向けて奮闘中。京都在住。