後藤さんは、バイトを辞めた後、ハローワークに通って仕事を探していた。しかし、いまはハローワークには行っていない。ずっと引きこもり状態の生活を送っている。

 実家には、働き始めてから、自分のくつろげる「居場所」はなくなっていた。

 元大手企業の会社員を定年退職した父親と、専業主婦で宗教にハマっている母親とは、これまで真剣に話をしたことがない。両親は、本性を現すことがなく、コミュニケーションがとれる状態ではなかった。

 実家に帰ってきたら、泊まる場所がなくなっていて、ネットカフェを転々とするネットカフェ難民になった。知り合いの家やホテルにも泊まり歩いた。

 結局、父親がお金を出してくれて、アパートを借りてくれたのだ。

 ところが、アパートの部屋にいると、こうした物音に悩まされるため、親の車の中で寝泊まりしていた。

ついにホームレスに転落
それでも家にいるより楽

 そして、1年余りにわたって、ホームレスを経験する。つらかった。

 おじいちゃんが夏にダウンを着ている気持ちがわかった。冬の寒さが身に沁みて、トラウマになるのだ。

 冬の間は、ホームレスと車上での寝泊まりを繰り返した。

 それでも、後藤さんの場合、ホームレスの寒さより、家にいるほうがつらかった。家にいるときには、下血や吐血などを起こして、体調も崩したことがある。