また、10人の高齢者だけが住んでいる離島に若者が移り住むのは、離島経済の活性化という観点からは望ましい。しかし、その結果として「生徒が1人だけの小学校」を作らなければならず、莫大な費用がかかるとすればどうだろうか。ならば、「就学期の子どもを持つ親は来ないでほしい」という意見もあり得るが、それは正論ではなく“暴論”として取り扱われるだろう。

 がんの高額治療薬に話を戻すが、「末期がんの高齢者を1日延命すると1億円なら、日本人の成人1人あたり1円だから、それくらいなら負担しよう」という人は多いかもしれない。しかしこれが、「1万人の高齢者を100日延命する」となれば、国民負担は1人当たり100万円となる。

 さすがに、「私は喜んで100万円を負担するから、皆も負担しよう」と言う人は少ないだろう。だが、万が一、そういうことになれば、人命の重さに耐えかねて皆が押しつぶされてしまうという話になってしまう。  つまり、1件ずつを見れば大した費用ではないが、合計すれば莫大な金額となってしまうということを理解しておく必要があるのだ。

目の前の問題も大事だが
将来の問題も大事

 それでは、100歳の末期がん患者を延命させるよりも、優先すべき金の使い道はないのだろうか。

 国の将来を考えれば、少子化対策や幼児教育無償化なども候補だろうが、人命ということに限ってみても、他の支出を優先すべきである。