サントリーがアサヒに意趣返し?<br />ブレンド茶市場の“脂っぽい”戦いサントリー「脂さっぱり息すっきり」(写真左)とアサヒ飲料「食事の脂にこの一本。」(右)

 小売業界関係者のあいだでちょっとした話題を呼んでいる2つの商品がある。11月に発売されたサントリーのブレンド茶「脂さっぱり息すっきり」と、2009年から発売されているアサヒ飲料の「食事の脂にこの一本。」である。

 烏龍茶ベースにプーアル茶などをブレンドしたという商品の内容も、脂っこい食事とともに飲む用途を打ち出している点も同じ。さらに写真を見れば一目瞭然だが、赤地に黒の組み合わせといい、脂っこそうな料理の写真といい、パッケージデザインも非常に良く似ている。

「どっちがどっちだか、見た目はほとんどわからない。絶対サントリーの“意趣返し”だね」(大手スーパー店員)

 事の発端はアサヒ飲料が「食事の脂にこの一本。」を発売した09年にさかのぼる。

 これは、烏龍茶とプーアル茶などのブレンド中国茶をベースにしたもので、脂っこい食事をとったあとに口をすっきりさせることを謳った商品だ。10年は年間販売目標100万箱の3倍以の約340万箱を販売するなど、ヒット商品となった。 

 当時業界では「あれはサントリーの黒烏龍茶潰しだ」(飲料業界関係者)との噂が流れていた。黒烏龍茶とは、06年に発売されたサントリーの特定保健用食品(健康の維持・増進に役立つと厚生労働省に認められた食品・以下トクホ)で、烏龍茶に含まれるポリフェノールの効果で食事の脂の吸収を抑制する、とされている。

 ちょうど、脂肪を燃焼しやすくすることを謳った花王の「ヘルシア緑茶」に代表される“トクホブーム”にも乗り、07年のピーク時には年間1010万ケースを売る大ヒット商品になったのだ。

 ただ、トクホである黒烏龍茶は350ミリリットルで定価160円と、通常商品よりも高い。スーパーの特売対象にもほとんどならないこともあり、ブーム後の売上は落ちてきていた。

 そこへ「食事の脂にこの一本。」が発売された。これはトクホではないため、健康効果はダイレクトに謳えないものの500ミリリットルで定価140円と安い。さらに、当時脂吸収効果があるとして話題になっていた、ポリフェノールが含有されることも強調され、実際に良く売れた。「黒烏龍とほとんど同じ効能を連想させるネーミングの商品を敢えて投入したように見える」(同業他社)ととられてもおかしくない。

 そんな経緯のあとで、サントリーがアサヒ飲料の「食事の脂にこの一本。」にそっくりの「脂さっぱり息すっきり」を投入したのだから、“黒烏龍の意趣返し”ではないか、と噂が立ったのだ。

 サントリーでは、ヒット商品である黒烏龍茶の市場を食いかねないコンセプトの新商品を出したことについて、「(黒烏龍茶より)もっと手軽な価格で、脂っこい食事と一緒に飲めるブレンド茶がほしいというニーズの高まりに対応した商品で、アサヒを意識したわけではない」としている。

 健康志向の高まりで、こうしたブレンド茶の市場は11年1~6月期ベースで前年同期比3%増と伸び基調にある。脂ものを食べる機会が多くなる忘年会シーズンを目前に、限られた成長市場を巡る飲料メーカー同士の“脂っこい”戦いは、まだ続きそうである。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

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