キリンホールディングス(HD)は、中国の食品大手の華潤創業と中国市場の清涼飲料事業で提携する。

 中国に合弁会社をつくり、華潤の既存ブランド品とともに、キリンブランドの「午後の紅茶」や「ファイア」などを製造販売。キリンは約332億円投じ合弁会社の株式40%を保有する。中国全土に約3000店ある華潤系列の小売り店網を活用して2015年には両社の現在の清涼飲料売上高合計(約200億円)の約3.8倍となる757億円の売上高を目指す。

 今回の提携についてキリンは「中国事業は新たな段階へ入る」(三宅占二・キリンHD社長)と期待を寄せる。

 株式市場の一部ではキリンを上回る期待感が抱かれていた。というのも提携発表当日、「中国でキリンと華潤がビール事業で提携する」との報道が事前に流れたからだ。華潤は「雪花」ブランドで展開するビールで中国トップ。そんな華潤とビール事業で提携が実現していれば、最大の成長市場の中国で出遅れていたキリンにとって、起死回生の一手となるはずだったからだ。

 ところが実際は、華潤はビールではキリンの10倍の規模を誇るビール世界2位の英SABミラーと資本も含めて組んでおり、現時点でキリンが参画する余地はなかった。「ビール事業で提携の話は出なかった」(三宅社長)と早耳の投資家の「期待はずれ」となった。

 キリンは2000年代後半、約1兆円投じてオセアニア・東南アジア地区に経営資源を集中して乳業会社やビール会社を次々と買収し、同地区で瞬く間に食品リーディングカンパニーの一角を占めるまでになった。だが、その代償が中国市場での出遅れだった。

 キリンとは対象的にアサヒビールは、1993年に進出して以来中国に重点投資し、すでに投資のリターンも得始めている。

 アサヒは中国大手食品流通の康師傅と組み、飲料会社の康師傅飲品(アサヒの持分法適用会社)を展開。04年に出資して以来、5年間で売上高は5倍の2300億円へと急成長を遂げ、中国飲料市場では米コカ・コーラに次ぐ2位のシェアを誇る。ビール事業でもシェア2位の青島ビールと資本提携(2割出資)し、青島との協業で今年度中にはアサヒ単独の中国事業の黒字化を見込む。また、康師傅の親会社の頂新や青島への出資分で、足元では約4000億円もの含み益も有する。

 もっとも、アサヒは15年までに現在5%の海外比率を20~30%に拡大する目標を掲げたが、これは現在のキリンに並ぶレベル。中国を除けば海外展開は緒に就いたばかり。中国以外のアジアやオセアニア市場の開拓を急ぐ予定だ。

 国内市場は縮小し、ビールメーカーの海外展開は必須。近隣の出遅れた市場への対応が課題となる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木 豪)

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