なぜ世界の先端研究者が「いきなり起業」できるようになったのか10月27日のイベントで提携発表した、左からHello Tomorrowのグザヴィエ・デュポルテ代表とMistletoeの山口冬樹シニア・アドバイザー、Hello Tomorrow Japanのジャン・ドミニク・フランソワ代表理事 Photo By Takeshi Kojima

世界中の先端研究者と実業界とをつなぐNPO団体がある。それが、フランスのHello Tomorrow(ハロー・トゥモロー)だ。2011年に発足後、研究者中心のコミュニティを築き、その輪は世界に広がっている。10月下旬、パリで開かれたグローバルイベントを取材し、代表のグザヴィエ・デュポルテ氏へのインタビューを行った。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 小島健志)

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先端研究「ディープテック」
名だたる企業が品定め

 2017年10月26、27日の2日間にわたり、フランス・パリの芸術・文化施設Cent Quatre(セント・キャトル)には「グローバル・サミット」というイベントに参加しようと、世界中から約3000人が集まった。

 約1000社のスタートアップと、BNPパリバにロレアル、エアバス、グーグルなどいう名だたる企業に加え、米ハーバード大学や米マサチューセッツ工科大学(MIT)などの有名大学、そして世界的なベンチャーキャピタルなどから豪華な顔ぶれがそろった。

 なぜなら、そこでは単なるデジタル系のサービスではなく、「ディープテック」と呼ばれる最先端の研究成果やそのビジネスプランが披露されていたからだ。

 そもそもディープテックとは、人工知能(AI)を始めロボット工学やエネルギー技術、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーなどに関するもので今、最もホットな研究領域だ。

 その科学の力をもってして、世界的な課題を解決しようとするスタートアップが集結したのである。具体的には「エネルギー」や「環境」「食と農業」「宇宙開発」「ヘルスケア」など10の課題に対するものだ。今回のイベントに当たっては、世界から4000に及ぶプロジェクトが提出された。

 会場では19世紀に建てられた歴史的な建造物にブースが設けられ、森や滝など、まるで自然の中にいるかのような飾り付けがなされた。随所でVR(拡張現実)や航空機の模型、ネコを模したロボット、植物工場など最先端の技術を体感できるようになっていた。

 ひときわ注目を集めていたのは、メインステージだった。大画面のスクリーンをバックに、AIを用いた「がんの予防医療」に挑むスタートアップや、3Dプリント技術で製造したバイオリンの生演奏をする企業、世界に展開する産業用ロボット開発メーカーなどが登壇していた。