フランスとテクノロジーを掛け合わせた造語「フレンチテック」が世界に広がっている。これを主導するのはマクロン大統領率いるフランス政府だ。DOL特集「シグナル」第2回では、フレンチテックとは何か、フランス政府の狙いとは何かを取材した。(週刊ダイヤモンド編集部 小島健志)
伝統のオペラ座に導入された
スタートアップ企業のスピーカー
140年以上の伝統を持つフランス・パリの歌劇場「オペラ座」。ギリシャ神話の神々をあしらった彫刻が並び、赤じゅうたんときらびやかなシャンデリアが重厚感を漂わせる。そんなオペラ座にフランスの最高級オーディオ開発ベンチャー「Devialet(デビアレ)」の旗艦店が間もなくオープンする。ベンチャー企業の店舗がオペラ座に入ること自体、異例中の異例だ。
デビアレは2007年にパリで創業し、2015年には代表作のスピーカー「PHAMTOM(ファントム)」シリーズを発表、発売した。
「伝統的なアナログスピーカーの音質はとてもいいが、設置場所が限られてしまい使い勝手が悪い。一方、デジタルスピーカーはその真逆だった。だからその二つを組み合わせればいいと考えた」(創業者でCTOのピエール・エマヌエル・カルメル氏)
そうして開発したのがアナログ・デジタル・ハイブリット(ADH)という技術だ。その技術が詰まったチップを内蔵した代表作のファントムは、抱えて持ち運べるコンパクトなスピーカーでありながら、その迫力たるや凄まじい。
最上位モデルは、最大出力4500ワットの代物。一般的なスピーカーでも数十ワット、ホームシアター製品で100ワット前後なので、いかにパワーが強いかが分かるはずだ。独自のデザイン性も高い。
米アップルも、その技術力とデザイン性の高さを認め、パソコンやスマートフォンの追加装備品としてアップルストアで取り扱っている。