小さな革命とはどういうことですか?
佐々木 なるほど。その小さな革命というのは、どんなことなんですか?
例えば、私が出させていただいた回の情熱大陸でいうと、どのあたりになるんですか?
福岡 そうですね。佐々木さんの回でいうと、佐々木さんが絶対必要だなと思っていたシーンはカットしていると思います。
編集の途中では残っていたんですが、最終的にはカットしました。
佐々木 カンボジアの小学校を訪れたシーンですね
福岡 そうですね。
佐々木 使われていたのは、5秒くらいで、そこがカンボジアであることもクレジットされていませんでした。
どんな場面だったか読者の方に説明すると、カンボジアのある小学校に『伝え方が9割』シリーズの印税の一部をつかって、図書室を寄付させていただいたんですが。その小学校訪問に密着していただいていたシーンがその5秒しか使われていなくてビックリしました。
その小学校ではスピーチをさせていただいたり、村の方と一緒に踊らせていただいたりして、とても感動的な体験でしたので。
あえて使われなかったということですよね?
福岡 そういうことです。本来は当たり前に使うだろうなというところを使わないで、当たり前じゃない使い方をしてみたりします。
当たり前に使うシーンを、同じようにつかっていると、視聴者は、「あ、また同じパターンね」と感じてしまいますから。当たり前を使わないことで、その時点でパターンが違ってきますから
佐々木 なるほど。コピーライターをやっている身からすると、CMの作り方とは全然違うなと思いました。CMの世界では、場面場面をもっとはっきりわからせていくので。先ほどのカンボジアの小学校で村の人と踊ってるシーンでは、解説もテロップもないから、その場所がカンボジアであるかもわからないですから。テレビとCMは違うということなんですね。
福岡 テレビというより、「情熱大陸」はそうしないということだと思います。
普通のナレーションの原稿では、「7人」を「ななにん」と読むんですね。「しち」だと「いち」と聞き間違えしやすいという理由で。そういう暗黙知のようなものがいっぱいあると思うんですが。ナレーションの窪田さんは、「ななにん」と読むのは、あまり好きじゃないんです。普通の会話だと、「しちにん」と読むだろう、という理由で。
テレビのナレーションは、どうしてもわかりやすいナレーションにしていこうとするので、四字熟語をあまり使わなかったり、「秋波(しゅうは)を送る」といったような表現もあまりしないと思うんですね。
でも窪田さんは、四字熟語など使われるんです。わかりやすさを追求せずに、いい感じの雰囲気を追求することはあると思います。
「そこは、雰囲気だけ伝わればいい」という時は
あえてテロップを抜いて雰囲気だけを伝えるとか。
僕はどちらかというと、テロップを入れる派かもしれませんが、あえてマイナスの作業をすることはありますね。
でも、佐々木さん。広告も結構わかりにくい広告あるんじゃないですか。
佐々木 確かに、あえて「何だろう」と興味を持たせる手法もありますね。今回の情熱大陸では、アジアに行ったという雰囲気だけ伝えたということですね。
福岡 極端にいうと、カンボジアの小学校の場面は、アジアであることがわからなくてもいいかなと。なんか、楽しく踊ってる感じが伝わればいいかと。
佐々木 そうなんですね(笑)
これも小さな革命を積み重ねるということなんでしょうか。