人気番組『情熱大陸』(毎日放送製作毎週日曜日よる11時からTBS系列で放送)のプロデューサーは、“伝え方”をどう考えているか。58万部を超えたベストセラー『伝え方が9割』の佐々木圭一氏と、初めての著書『情熱の伝え方』が話題になっている『情熱大陸』のプロデューサー福岡元啓。二人の対談をお届けします。
(取材・構成/上阪徹 撮影/安達尊)
不器用で当初は本当に苦労した、という共通項
佐々木 福岡さんのご著書『情熱の伝え方』を拝読しました。とても勉強になりました。僕は、本を読むと気になるところにガシガシ線を引いて、ガシガシ折るんですが、こんなにたくさん線を引いて折り込んだのは、最近ないです。
福岡 (実際に折り込まれた本を見て)すごいですね。そんなふうに読んでくださって、ありがとうございます。
佐々木 福岡さんの体験が前半にあって、後半になると情熱大陸の制作の話や出演者の方から学ばれた話が出てきます。後半はもちろん僕にはすごく勉強になったんですが、前半を読んで思ったのは、「自分に似てるな」だったんです。僕自身の今までの体験に、です。
『情熱大陸』のプロデューサーになられるまでに、苦労というか、大変な思いをされているじゃないですか。それを赤裸々に書かれていて。マスコミ就職が全滅したこと、コミュニケーションがうまくできなかったこと、最初はぜんぜん仕事ができなくてダメダメだったこと、先輩にキレられて泣いてしまったり、命令で一年間、紺色の前掛けをさせられていたり、会社であだ名をつけられていたり。
僕も、人と話すのが苦手で、それで理系に行ったんですよね。ロボットを勉強していて、技術者になるつもりでした。でも改めて人生を考えたときに、ロボットではなくて、やっぱり人とコミュニケーションできるようになりたい、と思ったんです。
でも、社会人になってコピーライターになってから、本当にうまくいかなくて。コピーが全然、書けなかった。僕は書くコピーがどれも使い物にならず、紙の無駄遣いだということで「最も環境にやさしくないコピーライター」とあだ名がつきました。
『情熱の伝え方』のエピソードに、報道部のとき、警察まわりをするくだりがあるじゃないですか。話をしたいけど、簡単には近寄れないし、会話はしてもらえない。だから、とにかく来る日も来る日も黙って道ばたで立ち続けていた、という話。これって、器用な人は絶対にやらないと思うんですよ。
福岡 そうでしょうね。器用だったら、そんなことをする必要もないでしょうから。
佐々木 だから、すごく共感して。僕はうまくコピーが書けなくて「どうしよう」と悩んで、あるとき思いついたことがあったんです。立ってコピーを書いたらどうか、と。これなら、寝ないで済む。立って書いたら、いいコピーが書けるわけではまったくないんですけどね(笑)。でも、なんとかしたかった。まわりから「なんで、お前は立っているんだ」と聞かれて、不器用な私は「いや、寝てしまうからです」なんて答えたりしていました(笑)。