年金受取りは要注意!
税金と社会保険料がアップすることも!

 額面収入は「年金受取り」のほうが多いにもかかわらず、「手取り」で見ると結果は逆転し、「一時金受取り」が130万円も有利となったカラクリは、税金と社会保険料です。年間収入が多いとそれだけ引かれる額が多くなるからです。

 まず、再雇用で働く60代前半の税金と社会保険料の負担は、「一時金」だと年68万円ですが、「年金」は年89万円にもなります。

 年金生活がスタートする60代後半の税金と社会保険料の負担は、「一時金」は年23万円ですが、「年金」にすると3倍以上の年70万円です。

 60代後半になると負担が大きく増える要因は、リタイアすると国民健康保険と介護保険に加入するからです。高齢化が進み、この2つの保険料は決して少なくなく、年金収入が増えると予想以上に負担が増えることを覚えておきましょう。

深田晶恵(ふかた・あきえ)ファイナンシャルプランナー(CFP)、(株)生活設計塾クルー取締役。1967年生まれ。外資系電器メーカー勤務を経て96年にFPに転身。現在は、特定の金融機関に属さない独立系FP会社である生活設計塾クルーのメンバーとして、個人向けコンサルティングを行うほか、メディアや講演活動を通じてマネー情報を発信している。20年間で受けた相談は4000件以上、「すぐに実行できるアドバイスを心がける」のをモットーとしている。ダイヤモンドオンライン、日経WOMAN等でマネーコラムを連載中。 主な著書に『住宅ローンはこうして借りなさい 改訂6版』『平均寿命83歳! 貯金は足りる? 定年までにやるべき「お金」のこと』(ダイヤモンド社刊)『共働き夫婦のための「お金の教科書」』(講談社刊)ほか多数。

年金の運用率が高くても、一時金受取りがおすすめ

 退職金の受取り方法は、一時金と年金のどちらが有利になるかは条件によって変わります。多くの場合、手取り面では「一時金受取り」が有利ですが、年金運用率が3%以上と高かったり、年金受取り期間を長くしたりすると、年金のほうが有利となるケースがあります。

 年金受取りの場合、勤務先の企業年金が受取り終了までの間、所定の運用率で運用してくれます。現在は、1~2%の企業が多数です。そんな中、3%以上だと、その分利息が増えるため魅力的に見えます。

 また、受取り期間も企業によって自由度は異なりますが、任意で選べるなら、受取り期間20年などと長く設定すると、1年あたりの収入が減り、税金と社会保険料の負担が少なくなります。

このように「年金受取り」が有利になりそうなケースもありますが、基本的に「一時金受取り」をおすすめします。