「子どもに英語をマスターしてほしい!」――そんな願いを持っている親御さんは少なくないだろう。しかし、そんな人でも「英語がペラペラになればそれでいい」などとは思っていないはず……。むしろ、本当にわが子に身につけてほしいのは、世界のどこでも生きていける頭のよさ、つまり「本物の知性」なのではないだろうか。
実際、応用言語学や脳科学、教育心理学などのアカデミックな研究では「外国語学習の機会が、子どもの知力やIQを高める」といった知見が蓄積されつつあるという。
いま、こうした科学的根拠(エビデンス)に基づいた指導によって、子どもたちの英語力を着実に伸ばし、人気を集めている英語塾があるのをご存知だろうか。元イェール大学助教授の斉藤淳氏が代表をつとめるJ PREPだ。
本連載では、同氏の最新刊『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語――わが子の語学力のために親ができること全て!』から、一部抜粋して「ほんとうに頭がいい子」を育てるための英語学習メソッドを紹介する。
TPRで「身体ごと」馴染もう
3~6歳くらいの時期は「英語をお勉強にしないこと」が大切なのですが、その中心となるのは、アクティビティに基づくアプローチ(Activity Based Approach)の考え方です。これは要するに、子ども自身が自ら参加できるアクティビティを用意し、そのなかで英語を体得できるようにするということです。
TPR(Total Physical Response: 全身反応教授法)は、アクティビティに基づくアプローチの一つです。これは1960年代にアメリカの心理学者であるジェームス・アッシャーによって提唱された古典的な指導法であり(Asher,1966)、J PREPキッズはもちろん、多くの児童向け英語教室でもすでに取り入れられています。
やり方は至ってシンプル。英語で指示されたことに対して、子どもが動作で反応することを繰り返すだけです。
この方法には3つの利点があります。
1. 基本的な動作を表す「動詞」を記憶に定着させられる
2. 友達や兄弟など「集団」でやると、ワイワイと盛り上がれる
3. 「ゲーム性」があるので、落ち着きがない子でも続けやすい
あくまで一例ですが、ご自宅や公園でこんな遊びができるかもしれません。指示をするときは、動作のお手本をやってみせたり、ジェスチャーを加えるといいでしょう。
・Stand up.「立って(両手を持ち上げながら)」
・Walk.「歩いて(自分も歩きながら)」
・Walk slowly.「ゆっくり歩いて(ゆっくり歩くしぐさ)」
・Stop.「とまって(左右の手のひらを差し出す)」
・Run.「走って(腕を振って走るしぐさ)」
・Run fast.「速く走って(腕を速く振って走るしぐさ)」
・Run faster.「もっと速く走って(腕の振りをもっと速く)」
・Let's sit down.「座りましょう(座る。落ち着かせたいときはゆっくりと)」
音楽を使うとより効果的です。「音楽を流す→音楽をいきなりとめる→(指示)→音楽を流す」とすると、音楽が鳴りやんだ瞬間に子どもは指示に耳を傾けやすくなります。このやり方はアメリカの幼稚園などでもStop and Go!という名で親しまれているアクティビティの一種です。
慣れるまでは、大人が「Sit down!」と言って、自ら座る動作をやってみせるようにします。そのあと、子どもにも同じ動作をさせることで、「(あ、『Sit down!』は『座る』ってことか……)」と悟らせるようにします。
日本語で説明し直す必要はありません。英語を英語のままなんとなく理解することが大切なのです。また、大人が指示するだけでなく、子どもにも指示させてみるのもおすすめです。