弁護士を食えない商売にした
司法制度改革の罪

 なぜ、こんな悲惨な業界になってしまったのか。すべては1999年以降、段階的に推し進められてきた司法制度改革による弁護士人口の増加が原因である。弁護士の“飯のタネ”は事件だ。特に、民事事件が弁護士の主な収入源となるが、事件など、そうそう増えるものではない。事件の数=仕事が増えず、弁護士の数が増えれば、食えない弁護士が出てくるのは自明の理だ。

 それにしても、こんな簡単なことを予想できなかったのだろうか。司法制度改革を推し進めてきた財界筋の1 人は次のように漏らす。

「気軽に病院や歯医者に行くように、ごく一般の市民も司法サービスが受けられる環境を整えたかった…」

 弁護士の数は増えたといっても全国で3万7680人(『2016年弁護士白書』)。医師の31万1205人、歯科医師の10万3972人と比べると、その数はまだまだ多いとはいえない。しかし、私たちごく普通の市民が、風邪を引いたから病院へ、歯が痛むから歯医者へ――というように、気軽に弁護士のところへ駆け込むかといえば、そうではない。

 ひどく揉めていない離婚問題なら、弁護士などつけずに家庭裁判所へ。借金問題なら、140万円までの額であれば弁護士の近接業種として知られる司法書士でも取り扱っている。多くのビジネスパーソンにとって「生涯最大の買い物」となるマイホームを購入した際、登記を頼むのは司法書士。自動車検査や古物商を営む際、書類作成を頼むのは行政書士だ。

 つまり、一般市民の生活と密接に関わった司法サービスを提供しているのは、弁護士よりも、むしろ司法書士や行政書士なのだ。大阪府で司法書士と行政書士を兼業する男性は言う。

「不動産業者と中古車販売業、風俗店などに食い込めば、十分食べていけますから」

 リピーターが見込める司法書士や行政書士と違い、弁護士の場合はそうはいかない。そもそも弁護士に相談するトラブルとは、こじれた離婚問題や相続、個人再生や自己破産といった高額の借金問題、債務整理、犯罪に絡むこと…つまり、人生を左右する一大事に限られる。弁護士と縁のないまま生涯を終える人も大勢いる。大阪府弁護士会所属の、中堅といっていい弁護士歴を誇る40代弁護士は言う。

「離婚問題を依頼してきた顧客が、また次の離婚も同じ弁護士に依頼するかといえば、それはちょっと違いますよね?遺産相続なども、1回頼んで解決したら、もう弁護士との縁はそれで終わりです。医師や歯医者と違って、継続的に弁護士と付き合いを持つ依頼人なんて、そうはいないのです」