「そうですね、糖尿病や更年期障害、シェーグレン症候群という難病もありますよ。あなたは年齢からいって更年期の影響は考えられますね。お口の中だけでなく、目が乾くドライアイ、乾燥肌等で悩んでいる方も多いですよ。漢方薬を処方しましょう。あとは、口の中の乾燥を防ぐ保湿ジェルをお渡ししますので、使ってみてください。それとカンジダ症に対しては、抗菌薬の内服をお出しします」

 今度は拓郎さんが尋ねる。

「あのう、カンジダ症は性病ではないんですか」

「えぇ、違いますよ。カンジダ菌は常在菌といって誰の口の中にも存在しています。唾液の中には、細菌やウイルスの繁殖を防いでくれる免疫グロブリンという成分があるのですが、ドライマウスのせいで唾液が減るとこの成分も減ってしまいます。するとカンジダ菌がどっと繁殖して、炎症を起こしてしまうんですね。それがカンジダ症です。こちらは抗菌薬を服用すればすぐ治りますので安心してください。

 性病だと誤解して、ケンカになるご夫婦がいるらしいのですが、違いますからね。どうか誤解しないでください。

 ドライマウスのほうは、治るまで時間がかかるかもしれません。根気よく治療して行きましょう」

 医師の即答にほっとして、2人は病院を後にした。

口が乾けば「あそこ」も乾く
枯れる季節の到来を実感

 病院からもらったリーフレットには、唾液の重要性と、その分泌を促す食生活の注意も書いてあった。安祐美さん自身、ドライマウスになったことで唾液の重要性は実感していたが、高齢者がお正月に餅を喉に詰まらせて亡くなる事故や誤嚥性肺炎の原因も、唾液の減少にあるというのは、あまり考えたことがなかったので意外に感じた。