経営 X 人事

優秀な若手が退職を考え始めたとき、キャリアコンサルタントはどうすべきか?

【面談1回目】

 「人事担当に紹介されました」とAさんが来室。

 「入社してあと少しで1年がたちます。内定時に希望していた配属だったのですが、就活時代に思い描いていた仕事とはほど遠く、ライバル会社と価格競争しているだけで、社会に貢献している気がしません。もう会社を辞めて他の企業に行きたいと思い始めています」

 大学時代に考えていたことや、今の部署への配属を希望した理由などを、感情をこめて話してもらう。さらには、営業活動に必要な業界、取引先、商品などの情報収集や社内での報告のしかた、経理・法務・ITなどについて現在どのくらい詳しいか、関心があるかなどを質問していく。

 正解かどうかは問題ではなく、その反応によって関心の度合いや、真剣にチャレンジしている姿勢を見るのが目的。その上での配属や異動を希望しているなら、求めているものを具体的に探っていく。ただし、社会貢献の部署希望については、しばし棚上げにして触れないことにした。

 周囲から「優秀である」と評価されている点に触れると、本人いわく「それは取りつくろったもので、できるのは学生時代に磨いた"調整機能"だけです」

 「部署は統廃合を繰り返していて、いつも不安定です。業務知識も取引先での顔もない課長が異動してきて、既存のメンバーが苛立っていて、職場がいつもギスギスしています」という話に移行していった。

 この後、体調不良の原因や、そんな時に応援してもらえる周囲の相談相手の存在について詳しく話が聞けた。この中で、両親(離婚している)との複雑な関係が浮き彫りになり、職場での問題解決の際にも、主張をするよりも「調整役になる」という自らの立ち位置に気づいていく。

 話をしているうちに、さまざまな角度から気づきがあったようで、「まずは基礎を固めたい」「退職という安易な考え方をせず、いろいろな可能性を追求してみたい」と言い出した。

 最後に「落ち着いて考えてから来るので、また相談に乗ってください」と言って帰って行った。

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「企業内キャリアコンサルティング」入門

2016年4月より国家資格となったキャリアコンサルタント。厚生労働省は企業内にキャリアコンサルタントを置き、従業員のキャリア支援を促進することを唱道している。本連載は、他社に先駆けて2001年に伊藤忠商事でキャリアカウンセリング室を創設して初代室長となり、退職後もライフワークとして「企業内キャリアコンサルティング」の普及に努めている浅川正健氏が、キャリアコンサルティングの望ましいあり方と、実際のコンサルティング事例を解説する。

「「企業内キャリアコンサルティング」入門」

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