日本の意思決定プロセスの硬直性(1):
国会審議と与党事前審査

 格付会社の英国への高評価は、裏返せば日本への低評価となる。もちろん、日本の財政赤字は、国債のほとんどが国内で保有されているため、深刻ではないという考え方はある。また、諸外国より低い消費税率を引き上げれば、財政赤字の縮小は可能との指摘もある。このような議論は、格付会社に対する財務省などの反論の根拠にもなっている。だが、格付会社は日本の財政赤字そのものよりも、むしろ意思決定プロセスの硬直性を問題視している。

 日本では、消費税増税を実現するために、国会の審議を経た法律制定が必要だ。しかし、消費税は国民に不人気で、これまでさまざまな内閣を苦しめてきた。消費税増税は、野党だけではなく、与党内からも反対する議員が多数出てくる、取りまとめの困難な政治課題である。

 そして、日本政治独特の「与党事前審査」というプロセスがある。これは、党の「政務調査会」を舞台に行われるが、さまざまな利益集団の代弁者である族議員の利害調整の場となり、しばしば重要法案が骨抜きにされてきた。政調会は、民主党政権誕生時に一旦廃止されたが、小沢一郎民主党幹事長(当時)への権力集中に対する批判が強く、その後復活している。

 実際、政調会の復活は、民主党政権の政策決定を次第に困難にしてきた。震災復興の傍ら作成された「社会保障と税の一体改革」の原案は、与党の承認を得る段階で修正された。原案で「2015年から」と明示された増税時期が、「2010年代半ばまでに」と曖昧な表現に変わったのだ。現在、増税案に対する与党内の反発は更に強まっており、与党事前審査を通過するのは容易ではない。