日本人後継者が見つかるまでの
戴社長続投は理にかなっている

 話を戻すと、シャープにも強い現場という優良企業のポテンシャルがある。しかし、年功序列と論功行賞的な人事で、現場のリーダーを経営者に据えるという人事をしてしまっては、元の木阿弥になってしまう可能性がある。現場のリーダーが必ずしも社長の器とは限らないからだ。事業レベルの戦略と全社レベルを俯瞰した戦略との違いが十分にわかっていないまま経営のトップに立つと、全体最適が実現できないのである。

 その点で、社外から強い経営者を招聘することは手っ取り早い解決策である。しかし、社内の人間がどんなに頑張っても社長になれないのであれば、社員の士気は下がるだろう。強い技術などの資源を社内に蓄積していくことを考えたら、終身雇用的な日本の雇用慣行も悪いことではないので、社内から優れた経営者を輩出することは必要なことでもある。

 戴社長が後継の日本人社長にポストを譲れるようになるまでCEOを務めるとしてきたことは、とても理にかなっている。今後、将来の後継者候補3人が共同CEOという形で、まずは「経営者見習い」としてトップの仕事をOJT的に習得する。誰が最もCEOにふさわしいかの意思決定を先送りし、実力がわかりリスクが低減されたところで後継者指名ができる。これが共同CEOによる意思決定の先送りのポイントだろう。

 ところで、こうした共同CEO制と、カンパニー制、事業本部制などの経営の分権化とは趣旨が違うことに注意が必要だ。前者は過渡的なものであり、後者は制度として永続的に複数のトップが立つことになる。

 ソニーのカンパニー制は各カンパニーへ事業ごとに経営責任を分散してしまった結果、各カンパニーのトップが事業ごとの個別最適だけを求めるようになり、企業としての全体最適が図れなくなった。共同CEOが単に事業ごとの役割分担になってしまい、それが常態化するようでは、結果的に単なる縄張り争いになって、うまくいかなくなるという危険性はある。

 シャープの今回の人事の肝は、戴社長も含む共同CEOになっていて、彼が実質的にリーダーシップを取れる状況にしていることだろう。後継CEO候補3人の他に戴社長が共同CEOに入ることで、全体最適を崩さないようにするストッパー役を戴社長が果たすことができるようになる。

 3人の後継候補にうまく帝王学を学ばせつつも、集権的な経営のメリットを損なわないようにする戴社長の役割が、この仕組みをうまく機能させるポイントになるだろう。

(早稲田大学大学院経営管理研究科教授 長内 厚)