権力ゲームは戦国時代や三国志の世界で、その目的は、集団のなかで一番になること(国盗り)と、異なる集団のなかで自分の集団を一番にすること(天下平定)です。もちろんみんなが勝者になれるわけではありませんから、集団のなかでどのように振る舞うかもこのゲームでは重要になります。この権力ゲームの行なわれるフィールドが政治空間です。

 それに対してお金儲けゲームの目的は、与えられた条件のなかでもっとも効率的に貨幣を増やすことです。権力ゲームは勝者総取りが原則ですが、お金儲けゲームはなにがなんでも一番を目指す必要はありません。べつに世界一のお金持ちになれなくても、ほぼほぼ裕福な暮らしができればみんなハッピーなのです。このゲームのフィールドが貨幣空間になります。

 政治空間には愛情や友情だけではなく、嫉妬や憎悪、裏切りや復讐などのどろどろとした感情が渦巻いています。恋愛から戦争まで、人間ドラマのすべては政治空間で繰り広げられるのです。

 それに対して貨幣空間はお金を介したコミュニケーションなので、ものすごくフラットです。いつも買い物をする八百屋のおじさんに愛情や憎悪を感じるひとはいません。通販でモノを買う場合は、相手が何者かなんて考えもしないでしょう。この冷淡さがあるからこそ、貨幣空間は無限に広がっていけるのです。

(作家 橘玲)