ドラマ、映画化もされた経済小説「ハゲタカ」の続編が、本誌1月28日号から連載を開始する。続編のタイトルは「強欲」を意味する「グリード」。ハゲタカシリーズに込められたメッセージとは何か。作者である真山仁氏のインタビューとともに、作品の魅力を振り返りたい。

「日本を買いたたく」。そう宣言し、企業買収を仕掛けるハゲタカファンドの鷲津政彦。鷲津に対抗しながらも、その権謀術数に翻弄される元エリート銀行員の芝野健夫──。「ハゲタカ」シリーズの魅力は、2人の男を軸に現代の企業社会をありのままに描き出す、そのリアリティにある。

 1作目の舞台は1997~2004年の日本だった。当時はどのような時代だったのだろうか。

 金融業界の構造改革を目指した金融自由化、いわゆる日本版ビッグバンが始まったのが96年である。その結果、銀行、証券、保険と金融業界の大再編が起こる。この間、97年には山一證券が自主廃業するなど、護送船団方式と呼ばれた保護行政は過去のものとなった。

 金融業界だけではない。99年には日産自動車がフランスのルノーの傘下に入り、2000年にはそごう、01年にはマイカルが民事再生法の適用を申請するなど、大手や老舗ですら売却、倒産の憂き目に遭う暗いニュースが相次いだ。

 また、2000年代初頭~中頃には、企業の敵対的買収が一気に増加した。村上ファンドやライブドア、楽天といった新興勢力が大手企業に買収を仕掛けていった。

 大企業だから安心という神話は完全に崩壊し、もはや日常茶飯事となった合併や買収の話題に、経営者から一般の従業員までが右往左往するようになったのである。

 こうした時代背景の下、作中では、主人公の鷲津があらゆる金融の手法と情報戦を駆使し、大型買収を成功させていくのだ。