北朝鮮の五輪参加と引き換えに
韓国はうまく利用されようとしている
1月9日、韓国と北朝鮮の約2年ぶりの“南北協議”が行われ、北朝鮮は平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックへの参加を表明した。今回の協議で北朝鮮は、オリンピック参加を条件に韓国をうまく利用したように見える。
北朝鮮の狙いについてはさまざまな観測はあるものの、一つの目的は韓国と米国の関係を分断することにあるのだろう。韓国から融和的なスタンスを引き出すことで、国際社会からの圧力を弱めることができると考えたのかもしれない。それは、金正恩・朝鮮労働党委員長の独裁政権を維持するために重要な要件になるはずだ(事実、北朝鮮はその後も、五輪不参加の可能性をちらつかせるなど交渉の牽制材料としている)。
今回の協議の内容を見ると、終始、北朝鮮が議論を主導したことが確認できる。特に、非核化に関する言及がなかったことは、これまでの対外政策を変えないという金委員長の意思表明だ。
北朝鮮は核攻撃能力という脅威を米国に示し、制裁解除や体制維持などの確約を取り付けたいと考えているのだろう。ということは、ミサイル技術の確立のために発射実験は今後も続く可能性が高い。
韓国の文大統領とすれば、朴前政権との政策の違いを明確にすることで点数稼ぎをしたかったと見られる。その意味では、2月9日から開催される冬季五輪への北朝鮮参加を実現することは重要だった。韓国は、北朝鮮の五輪参加と引き換えに、制裁の一時解除まで検討し始めている。韓国は、北朝鮮にうまく利用されたように見える。
恐らく五輪後には、延期された米韓の軍事演習が実施される。米国のトランプ大統領が北朝鮮に対する強硬的な発想を持っていることも踏まえると、朝鮮半島情勢が一段と緊迫化する可能性は過小評価すべきではない。