「ロンドンは、確かに金融面では世界の中心ですが、金融だけでは雇用が広がりません。こうしたことが背景にあるのか、英国人の職探しは中国にも及んでいます。私の友人のように、中国人の女性と結婚するケースも増えているのです」

 英国は、かつての「大英帝国」の発展に裏付けられた伝統と自信が、今なお国を支えているといえるが、中国人にとっては"すっかり衰退してしまった国"と映るようだ。

 一昨年、英国を訪れたという、中国の外資系企業管理職の中国人女性に印象を尋ねた。彼女もまた同じようなことをコメントしていた。

「『貧しい』の一言に尽きます。都市部は物価が高い割においしいものがない。地方都市には美しい庭を持つ家が多いけれど、お金がないから"庭いじり"くらいしかできないのでは?」

英国は「富国」ではなく「腐国」

 ロンドン滞在中には、こんなブラックジョークも耳にした。

「中国人からすれば英国は『富国』ではなくて『腐国』だ」──。

 日本語でもそうだが、中国語でも「富」も「腐」も「fu」と発音する。だが、この同音異義語が持つ意味は、天と地ほどの差がある。なぜ、彼らは「そこまで言う」のか。

 ロンドンに限っても、確かに建物やインフラの老朽化はあちこちに見られる。地下鉄の駅舎を見ても、東京メトロ銀座線・浅草駅のような「昭和チック」な駅舎がむしろ標準だ。レンガ積みの壁に、木製の古びたベンチ…。だが、風化したそのたたずまいにこそ、思わずカメラを向けたくなるような美しさがある。

 しかし、旅行者にとって、それは「価値」であっても、居住者にとってはそうでない場合もある。現にこの地下鉄には「不便」を訴える声は少なくない。一部では車両の車高の低いものや、いまだエアコンが据え付けられてない路線もある。遅延も少なくない。

 ロンドンの地下鉄は、放っておかれたわけではない。2012年のロンドンオリンピックを機に、輸送能力増強に向けた大規模な投資が行われた。現在もカーン市長のもとで、駅のバリアフリー化率の引き上げが進んでいる。日本の政府機関に駐在する日本人は次のようにコメントする。