飛び過ぎる軟式野球バットは「お笑い番組の風船」にヒントを得た木田敏彰・ミズノ グローバルイクイップメントプロダクト部 用具開発課 課長 Photo by Shun Kondo/REAL

 バットの開発に携わるようになったのは入社6年目の1998年。「野球に携わる仕事がしたい」とミズノに入社した木田敏彰にとって、願ってもない職場だった。会社からは「今よりも飛ぶ軟式ボール用バット」の開発を命じられた。

 ゴム製で中空構造の軟式ボールは硬式よりも飛ばない。それを意図して作られているのだから当然だ。飛ばないが故、投球技術の進歩により軟式野球が投手戦一辺倒になりがちという問題が浮上した。

 外野を越える打球がなかなか出ず、このままでは打者も観客も面白くない。それを危惧した全日本軟式野球連盟から、ミズノに「飛ぶ軟式用のバットを開発してほしい」という要望があった。

 実はそれより前から「軟式でも飛ばしたい。ホームランを打ちたい」というユーザーのニーズがあり、ミズノも打球部にスリットを付けたり、バットの内部構造を変えてみたりした。しかし、うまくいかなかった。

 営業サイドからは「軟式バットなんて、どれも一緒や」と言われる始末。軟式バットは“飛び”ではなく、低価格、軽さや振りやすさ、見た目をメーンに設計される状況が続いていた。

軟らかい方が飛ぶ!
発想を大転換

 万策尽きたように見えたが、木田はあることに気が付く。

「バット側の検証は十分行ったが、打球時のボールの形状はどうなっているのだろう」──。