こうした社会・経済を、サービスにコインを払うようなイメージで「トークンエコノミー」、あるいは個人の「価値」が主に評価されてやりとりされるという意味で「価値経済」などと呼ぶようだ。

 さて、そのように特徴づけられる状態を仮に価値経済と呼んだ時に、価値経済の下で、資産運用ビジネスはどのようなものになるか。

 感動を与えてくれた相手に、ネットを通じて仮想通貨で投げ銭する世界があるとしよう。それでは、この感動の生産者が、将来の投げ銭を見込んで当面の活動に必要な「価値」(仮に仮想通貨で支払われるとしよう)を調達するような場合に起こる「価値」の流れは、現在の株式投資における投資家から資金調達企業へのお金の流れと同質だ。

 ただしここでは、資金調達を手伝う証券会社や、アナリストといった中間介在者が中抜きされて、投資家が感動への期待と共に自分で価値を支払っている。

 さて、これでよければ誰にとっても人生は楽なのだが、それを「お金」と呼ぶとしても「価値」と呼ぶとしても、他人が自分に何かをしてくれるように促す力に相当するものについて、個人は(1)「価値」を稼ぎ、(2)将来に備えて「価値」を貯めて、(3)その「価値」を効率良く運用し、(4)将来は保有する「価値」を取り崩す、といったことが必要である状況には変化がなさそうだ。

 この場合、(1)稼ぎはそれなりに努力するとしても、(2)と(4)における計画性に加えて、(3)の効率性の向上が必要になるだろう。

 誰もが、自分が望むだけの「価値」を、いつでも手に入れられるわけではないのだろうから(注;この点についてはもっと楽観的な意見もあるが、楽観論が現実的だとは思えない理由がいくつかある)、個人や企業が貯め込んだ「価値」を運用する手段は必要なはずだ。

 そしてこの場合、「価値」の運用・投資先はリスク分散されていることが、「価値」を保有している個人にとっては合理的だろう。「価値」の投資先は、現在の上場会社の株式のようなフォーマルで重苦しいものである必要は全くなく、何らかのビジネスや社会活動のクラウドファンディングであってもいいし、人気を集めそうなユーチューバーのビジネスプランでもいい。

 こうした「価値」の投資先に関する情報を収集し、リスクと期待リターンを計算して、適切に分散投資されたポートフォリオを作り、願わくは運用に「感動」の要素も付加してくれるようなサービスは、恐らく人間には能力的に無理があり(大金持ち相手でなければペイしないだろう)、AIを使った運用サービスが構築される必要があるだろう。

 この時代の資産運用のAIが、どのようなものになるのかは興味深い問題だが、まず「儲かる投資先を探す」意図に重きを置くものが工夫され、その後、AI運用者自体の平均を利用するような、いわばインデックス運用のような発想のプログラムが有効となって、最終的にはETFのように組成されて自動運営され、投資家にとっての「価値」運用のコストが大きく下がることになるのではないかと予想しておく。

 さて、歴史は繰り返すだろうか?

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)