大きな事件の陰に
ソーシャルメディアの力
2011年、ソーシャルメディアは話題となった大きな事件に必ずと言っていいほど顔を出していた。
日本で挙げるべきは、やはり東日本大震災である。地震発生後、安否確認や情報収集などにツイッターやミクシー、フェイスブックが大活躍した。ツイッターのタイムライン上には「○×避難所で必要な物は…」などの具体的な情報が流れ、いずれもテレビやラジオ、新聞、雑誌などの既存メディアよりも早く、正確で、詳細な情報が流れるメディアとして機能していた。熊坂仁美・ソーシャルメディア研究所代表は、震災後のソーシャルメディアの活躍ぶりを次のように話す。
「既存メディアを補完したのがソーシャルメディアで、震災をきっかけに市民権を得た。その証拠にNHKが討論番組でツイッターと連携するようになった他、ユーチューブやユーストリームでの番組公開などを積極的に行うようになった。以前はテレビ局内で『ユーチューブ』は禁句だったことを考えると、本当に大きく変わった」
一方で、混乱も多かった。大きな話題となったのは5月に起きた、アディダス従業員によるサッカー日本代表のハーフナー・マイク選手に対するツイッター上での誹謗中傷事件だ。ネット上では実際にツイッターに投稿した従業員に対してのみならず、アディダスに対しても厳しいコメントが溢れた。
徳力基彦・アジャイルメディア・ネットワーク社長は2011年をこう振り返る。
「ソーシャルメディアに関して、2011年はむしろマイナス面の方が多かった。アディダスの件をきっかけとして、企業側の防衛意識が強くなり、企業の法務部や人事部が社員や自社のツイッターの使用を制限させる動きも出てしまった」
先述したように、震災後のソーシャルメディアの大活躍は目を見張るものがあったが、同時に信憑性が疑わしい情報も多く流れ、混乱の原因となってしまったこともあった。