しかし、この建設業者は「利益が出るとは思えない」と、盟主からの参加要請を断った。理由は人件費と資材費の高騰だ。

 宮城県の公共事業費は10年で約9000億円から2970億円と、3分の1にまで縮小。建設業界では廃業や倒産、リストラの嵐が吹き荒れ、建設業従事者の人数はピーク時の7割にまで減っていた。

 需要減少に合わせて、生コンクリート工場の数も10年前の半分に減ったほどだ。そんな状況で起きた大震災。本格的に復興工事が始まる来年度は「10年分の仕事量」が殺到すると予想されているのだから、人もモノも足りなくて当然だ。

 すでに人手不足は深刻化しており、宮城県では昨年10、11月には不調(入札業者がおらず、入札が成立しない)工事の比率が全体の4割にも上った。専門技術を持つ技能労働者のみならず、交通誘導のガードマンすら足りず、震災前なら7000~8000円程度だった日給が今では1万5000円にまで跳ね上がったという。

 工事が本格化する来年度以降はさらなる人手不足と賃金高騰が予想される。ましてや、こんな大量のがれき処理は誰も手がけたことがない。「思いのほか時間がかかるなどして、儲かるはずが一転、赤字になる可能性もある」(別の地元建設業者)。中小建設業者のみならず、「清水建設だって、おっかなびっくりで鹿島のJVに乗った」(某ゼネコン幹部)とささやかれている。

 復旧・復興は時間との闘い。行政側は「柔軟に価格を見直す」(村井嘉浩・宮城県知事)と表明するなど、建設業者の不安払拭に心を砕くが、これまで公共工事でさんざん赤字受注を繰り返してきたトラウマか、地元建設業者は「にわかには信用できない」と慎重姿勢を崩していない。

 人手不足は、民間の建設事業にも響く。被災地では壊れた工場の修繕や取り壊し作業が終わり、これから新築案件が増えると見込まれているが、価格が急上昇しているため、建設を躊躇する企業が増えている。

 それだけではない。被災地が全国の建設労働者を吸い上げているため、ほかの地域の工事でも労務費が上昇しているのだ。あるスーパーゼネコン幹部は「せっかく復興需要で稼いでも、民間工事で赤字となるかもしれない」と顔を曇らせる。民間工事のダンピング合戦は激しく、ただでさえ赤字すれすれの受注も珍しくない。そのうえ、工期途中のコスト上昇を支払ってもらえる可能性も低い。