――うーん、ちょっと耳が痛いですね……(笑)。では、村上監督は選手に「理解」させるために、どのような工夫をしているのですか?

村上 日本や他国で世界チャンピオンになった選手の話をしたり、他のスポーツで成功した選手の本をすすめたり、とにかく、本人が自力で何かに気づくようなヒントを与え続けますね。

 厳しいトレーニングを課したり、説教したりしたって意味ないですからね。無理やりやらされても、自分の頭では考えないし、説教なんかしたって、聞いちゃいませんよ。それよりも、自分で気づいてもらうしかない。それ以外に、成長の糸口をつかんでもらうことはできないと思いますよ。

 あくまで、どうやって本人が「理解」するか。「悟る」か。指導者は、そのヒントを与え続けるほかないと思います。

――言いたいことを言わないのは、じれったくありませんか?

村上 それは、仕方ないですよね(笑)。こっちが無理やり何かをやらせても、頂点を極める選手は生まれませんからね。

石川佳純、平野美宇、伊藤美誠…強い卓球選手は「理解力」が違う

 もちろん、選手を叱って成績を出している指導者もいます。だけど、かつては卓球の世界にも、負けた選手に罵声を浴びせたり、ペナルティのトレーニングを科すような指導者がいましたが、そこそこ強い選手は育てられても、世界レベルの選手を育てることはできませんでした。

 これは、考えてみれば、当たり前のことなんです。だって、卓球という競技は、一瞬で局面が変わるスポーツです。そのような競技で、人から命令されたことだけを実行していて、勝てるはずがないじゃないですか。一瞬の判断を自分で下すことができなければ、脳や体はちゃんと働いてくれません。だからこそ、自分の頭で考える選手でなければ、世界レベルにはなれないんです。

――なるほど。しかし、監督が気づきのためのヒントを与えるだけでは、それに気づく選手と気づかない選手が生まれるのでは?

村上 それも仕方がない。自分で気づけない選手は、こっちが無理やり押し付けてもどうにもならない。それに、僕は、スパルタ式とは180度違う“選手が自分の意見を言える練習環境”をつくりたいんです。自分でモノを考えて、自分の意見を言える選手を育てたいからです。

 もちろん、こちらが粘り強く気づきのチャンスを与え続けても、なかなか気づいてくれない選手はいます。だから、指導側には強い忍耐力が求められます。できるだけ落ちこぼれはつくりたくないですからね。しかし、それでも気づいてくれない選手は、もう仕方がない。そのような選手に無理やり何かをしても、世界レベルにはなれないのですから。

――うーん。優しいようで、厳しい育成法でもあるんですね。

村上 まぁ、そうかもしれませんね。実は、スパルタ式でやれば、落ちこぼれを少なくすることはできるんです。全員に無理矢理やらせるんですからね。ある意味では、スパルタ式は優しいと言えなくもない。しかし、それでは、世界レベルの選手は生まれない。僕のミッションは世界レベルの選手を育てることですから、スパルタ式はとらない。世界レベルの選手を育てるために必要なことだけをやる。それがプロフェショナルだと思っています。

――背筋を正される思いがしました。ありがとうございました。