総予測2026Photo by Yoshihisa Wada

2025年は地域金融機関に焦点が当たる一年だった。地域のトップ行同士の経営統合をはじめ地銀再編が本格化。信用金庫や信用組合で相次いだ不祥事は、ガバナンス面の課題を浮き彫りにした。特集『総予測2026』の本稿では、金融庁の伊藤豊長官に、金融行政の課題と今後の対応を問うた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 高野 豪)
※インタビュー日は2025年11月12日

金融機能強化法改正へ議論
資本参加制度を恒久化

――2025年7月の長官就任から半年近くが経過しました。振り返ってみていかがですか。

 新体制が始まり、今後の課題は何かを示す「金融行政方針」を8月末に出しました。1カ月半ほど庁内の職員と議論し、前の体制から引き継いだものもありますが、25事務年度(25年7月~26年6月)の重点項目をまとめました。金融審議会(首相の諮問機関)の作業部会で検討が進み、予定通り着々と課題に対応しています。

――課題とは何ですか。

 まず地域金融力強化プランの策定です。地域金融機関の活躍をもっとアピールし、さらに横展開していくための好事例を業界の皆さんから教えてもらい、今取りまとめているところです。

 そのために金融機関の財務や人的基盤が必要になります。それを支える制度として「金融機能強化法」の改正を作業部会で検討しています。

 金融庁として地域金融機関を応援できる仕組みをしっかり作り、万が一のときにも備えることをプランに盛り込む方向でスタートし、着々と検討が進んでいます。

――金融機能強化法の改正に向けた議論では、公的資金を注入する「資本参加制度」の震災特例に相当するものをあらかじめ制度的に整備すると記されていますが、この意図は?

 東日本大震災と新型コロナウイルス禍の際に2回特例を設けました。ただ、何かが起こってから法律を直して対応するとタイミングがずれます。従って、備えるべきものは前もって用意しておいた方が安心ですよね。使わないのであれば使わないでいいですけども。

 そういう考え方で、これまで2回やってきたわけですから、これを参考にして災害に対応する。南海トラフ地震や他の地震もいつ起こるか分からないので、あらかじめ制度整備するということです。

――制度が恒久化されれば、いつでも公的資金が金融機関に入る形になりかねません。その点は問題にならないのですか。

金融審議会の作業部会では、公的資金の在り方や業態を超えた合併・経営統合に資金を上乗せで交付する制度についての議論が進む。地域金融の文脈では、信用金庫や信用組合といった協同組織金融機関に対するモニタリングの強化も焦点の一つだ。次ページでは伊藤長官がこうした点への問題意識に加え、地銀再編への思いを語った。