原油相場は、2017年6月下旬にかけて弱含む推移となっていたが、その後は上昇傾向を続け、足元では4年ぶりの高値となっている。欧州北海産のブレント原油は1バレル当たり70ドルを超え、米国産のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は同60ドル台後半に達している。
これは原油相場の押し上げ材料が相次いだためだ。11月末には、OPEC(石油輸出国機構)総会とロシアなど非加盟産油国を含めた閣僚会合が開催され、日量約180万バレルの協調減産を18年末まで延長することで合意した。予想通りで、材料出尽くし感から売られるとの見方もあったが、その後、ナイジェリアでのストライキ懸念や欧州北海でのパイプライン操業停止が続き、相場押し上げ材料になった。
年末、年初には、リビアでのパイプライン爆破、イランでの反政府デモ拡大、サウジアラビアでの王子11人の逮捕などから原油供給の不安定化への懸念が強まった。
1月12日にはロシアのノバク・エネルギー相の「原油市場はまだ完全に均衡していない」との発言により、比較的早期に産油国が協調減産を解除する可能性があるとの懸念が後退した。19日には、IEA(国際エネルギー機関)の月報で、経済危機にあるベネズエラの原油生産量が大幅に落ち込んでいることが需給引き締め要因だと指摘された。
22日にIMF(国際通貨基金)が世界経済の成長率見通しを上方修正したことも、原油需要の増加観測につながった。24日には、ムニューシン米財務長官の「弱いドルは良いこと」との発言でドル安が進み、ドル建てで取引される国際商品全般が割安感から押し上げられた。また、EIA(米エネルギー情報局)の週次石油統計において、原油在庫が連続して減少し、需給引き締まり感が強まっている。
もっとも、北海、リビアの供給障害や中東の地政学リスクは、解消されたり、沈静化したりしている。ドル相場に関する米政府の立場は、トランプ米大統領が「強いドルを望む」と発言し、軌道修正された形となった。
石油サービス会社のベーカー・ヒューズが発表する米石油掘削リグの稼働数も増加し始めており、原油高を受けて、米シェールオイル開発が活発化する兆しが出てきたようだ。
米国の税制改革やインフラ投資による景気押し上げ期待を背景とした株高も、スピード調整が必要な局面に差し掛かりつつあるように思われる。リスク資産全般が買われる流れも一服するだろう。原油の不需要期となる春に差し掛かることもあり、原油相場は上値が重くなるだろう。
(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)