「子どもにかけられるお金」の多寡が格差を生んでいる親の年収が高い児童ほど高い学力を持っており、国語よりも算数にその傾向がやや強く現れるようだ(写真はイメージです)

要約者レビュー

「子どもにかけられるお金」の多寡が格差を生んでいる『子ども格差の経済学』
橘木俊詔、296ページ、東洋経済新報社、1500円(税別)

 子どもにどんな習い事をさせるか、将来はどの学校に通わせたらいいか、そのためには塾へ行かせた方がいいのか。家計とのバランスはどう考えたらいいか。親たちの悩みは尽きない。最近は昔と比べて様々な情報が簡単に入手できるようになっており、ますます親たちには情報を適切に取捨選択し、判断する力が求められている。親として何をしてやれるかについて、改めて考える必要がある。

 子どもに何かを習わせたいと思ったとき、決して無視できない検討事項が経済的負担である。いつから塾に通わせればいいのか、中学、高校と私立校に通った場合にはいくらかかるのか、きちんと把握しておくことが大切だ。子どもが複数人いるならなおさらである。本書『子ども格差の経済学』では、家庭の経済力が、子どもが受ける教育にどのように影響するのかを、データを分析しながら詳細に考察している。特に注目されているのが、塾通いや、ピアノやサッカーなどの習い事である学校外教育である。

 そのほかにも、塾通いの大学進学への影響、学校教育にかかる費用、幼児教育の考え方など、幅広いトピックが紹介されているので、誰でもきっと自分の気になるポイントが見つかるだろう。また、子育てのステージが変わった際に改めて読み返してみるのもいいかもしれない。いずれにせよ、子育てをするうえで重要な、「お金」というテーマについて、考えさせられる一冊だ。 (山下 あすみ)

本書の要点

(1) 将来名門大学といわれる大学に入学するには、中学受験、高校受験突破のための塾通いが欠かせない。塾に通える子はすなわち親に経済力がある子であり、高い学力が認められている。
(2) スポーツや芸術関係の習い事でも塾などと同様に費用が発生する。特に、芸術関係の習い事には費用のかかるものが多く、限られた家庭にしか機会が与えられなくなっている。
(3) 日本では、教育は私的財の側面が強いという認識があるが、教育は公共財の側面がもっと強いものであるとの認識を高めるべきだ。