親の収入や家庭不和は子どもの低学歴化に影響しがちなものだが、最近では高学歴な学生が就活で失敗し、社会で負け組になるケースも増えている(写真はイメージです)

 今回は、学歴を身につけるために不可欠な「家庭の力」について考えたい。「家庭の力」とは、親の収入や職業、家庭環境などを意味する。

 家庭の力が強いと、子どもは高校、大学受験などで一定の結果を出す傾向がある。一方で、親の収入が極端に低かったり、家庭内不和が繰り返されていたりする場合は、子どもの成績は伸び悩み、受験などにも悪影響を与えることがある。受験の失敗は、将来の就職に影響することもある。

 こうした話は以前から世間でよく聞かれるが、最近は新たな傾向も見られる。大学受験で一定の結果を出した学生でも、新卒時の就職で失敗することがあり得る。経済的に苦しい学生が増え、アルバイトを大量にこなし、学業どころではないことが理由なのかもしれない。

 こういう状況になると、「学歴」にしがみつく人がより一層増え、いわゆる「学歴病」が浸透することが考えられる。それが経済や社会を停滞させる。理由は本文で説明するが、そんな悪循環を見つめ直したい。


人は生まれながらにして不平等
「家庭の力の差」が生み出す学歴病

 2014年の夏、7年ぶりに実家に帰省した。中学生の頃の友人2人と会った。1人は県立高校(商業科)を卒業し、名古屋市内の自動車販売会社に就職した。現在に至るまでの約二十数年間、一貫して自動車のセールスをしている。この男性をA氏とする。

 もう1人は県立高校(普通科)を卒業し、関西の有名私立大学に進み、大手証券会社に就職したものの、社風になじめず退職。その後、金融機関に転職し、名古屋市内に本社を構える食料品メーカーに出向し、執行役員をしていた。この男性をB氏とする。

 2人とも息子がいる。2014年の春、共に大学に進学した。A氏の長男は同志社大学(人づてに聞いたところによると商学部らしい)、B氏の長男は京都大学の法学部だった。父親である彼らによると、2人とも小学生の頃から成績はよく、大学受験のときには「勉強をほとんどしないのに現役で合格した」のだという。酒を飲んでいたせいなのかもしれないが、2人は息子のことを誇らしげに語っていた。