韓国ロッテグループの重光昭夫会長が朴槿恵韓国前大統領側への贈賄罪で実刑判決を受けた。ロッテの経営に大きな風穴が開くとともに、機をうかがっていた兄の宏之氏との間で経営権を巡る争いが再燃しそうだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本輝)

ロッテ会長に韓国で実刑判決、経営権争いの再燃は必至昭夫氏の求心力低下で、兄の宏之氏による巻き返しも予想される Photo:YONHAP NEWS/AFLO

 関係者の多くが意表を突かれた。

 ロッテグループの創業家一族である重光昭夫(辛東彬、シン・ドンビン)会長は韓国において、朴槿恵(パク・クネ)・韓国前大統領側への贈賄罪で在宅起訴されていた。関係者の間では「ここ最近の一連の裁判が軟化している雰囲気もあり、実刑判決で即日拘束という事態にまではいかないのでは」という見方が多かった。

 ところがである。ソウル中央地裁は2月13日、昭夫氏に懲役2年6ヵ月の実刑判決を下した。昭夫氏の身柄は即日拘束された。

 昭夫氏は昨年の12月にも、親族らへの不正な給与の支給といった横領、背任の罪を巡る裁判でソウル中央地裁から有罪判決を受けているが、このときは執行猶予付きの判決で済んだ。

 同じく朴氏関連の裁判で贈賄の罪に問われていた財閥系のサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は、一審で実刑判決を受け拘束されたものの、2月5日の二審判決で執行猶予付き判決が下され、直ちに釈放された。

 一連の流れから楽観論が強かったのだが、現実はロッテグループにとって最悪のシナリオとなる実刑判決。これによってグループの経営は大きな転換を余儀なくされよう。

 まずは、昭夫氏が即日拘束されたことで、ロッテグループの経営に空白が生じる。韓国では拘留されながらも経営を行う“獄中経営”は珍しくない。とはいえ、物理的な活動が制約される以上、意思決定などに遅れが出ることは避け難い。