平昌五輪、下町ボブスレー土壇場で不採用の真相Photo:AP/AFLO

 日本のものづくりを代表する取り組みとして脚光を浴び、日本製造業再生の希望としてメディアが取り上げてきた下町ボブスレー。しかし、下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会(下町P)が契約していたジャマイカチームは、平昌五輪で下町Pの機体(ソリ)を使用せず、ラトビアBTC製のソリを使うという決断を下した。これに対して下町Pが2月5日、意見表明の記者会見を行ったところ気運は一転した。

下町ボブスレーがバッシングされた理由

 下町Pが記者会見で「解約の場合は契約に従い損害賠償も辞さない」としたところ、ネット上にはさまざまな意見が飛んだ。「競技の世界で遅かったらやむを得ない」「損害賠償は恥ずかしいからやめろ」といったものに加え、「補助金ブローカーや代理店に食い物にされた」「6000万も補助金をもらいながらラトビアの町工場(BTC)に負けた」など、バッシングもあった。さらには2016年7月に下町Pが安倍総理に表敬訪問していることから「ここにも安倍の不透明な補助金事業があった」と騒ぐものさえ出る始末だった。

「アベノセイダーズ」(モリ・カケ問題以降、なんでも安倍内閣の陰謀とする人のネット上の呼び名)の意見は無視すればいいとしても、地方創生や産業育成に関する補助金事業では、失敗事例を聞くことは少なくない。本件もそういった事例のひとつではないかと考え、調査・取材を始めた。

 本稿執筆前、筆者は補助金ありきでコンサルが描いたプランが破綻したパターンではないかと思っていた。が、下町Pのホームページ、ジャマイカのボブスレー連盟のホームページなどを改めて確認し、中小企業庁、大田区産業振興協会らに取材をすると、ネットで騒がれていることとは違う構図が浮かんだ。

 問題の原因は複雑で、誰・何が悪いとは簡単には判断できない。ただ少なくとも、ネット上で影響力のある人たちの書き込みにも誤認と呼べるものがいくつかあり、結果として世論が過激な方向に向かっていったことは確認ができた。