【大学入試の想定問題】
以下の文章を読んで、あなたが考えたことを論じなさい。

どこまでもまっすぐ伸びる一本道にあなたが立っている。このとき自分の目の前と後ろとを、人生の過去と未来のいずれかに例えるとする。目の前は過去と未来のどちらで、後ろはどちらに例えられるだろう。そんなわかりきったことを聞くな、前が未来で、後ろは過去に決まっている。人間は前へ歩いていくものだ、そう答えるかもしれない。だが、アフリカのある民族では目の前を過去、後ろを未来に例えるという。その理由はこうだ。人間は過去を見知っている。近い過去ははっきりと覚えていて、遠い過去はぼんやりとしか思い出せない。これはまさに目の前に見えている景色そのものではないか。一方、未来のことはどんなに目を凝らしても見ることができない。後ろを見ることができないのと同じだ。そういう考え方をする民族がいるのだそうだ。(以上)

この課題文の趣旨は「アフリカのある民族では、目の前を過去、後ろを未来に例えていて、私たちの捉え方と違う」というものです。これに対して、「その通りだ」とか「それは間違っている」などとは、アフリカ民族の研究者でもない限り、書きようがありません。

ただし、答案作成の考え方は、先ほどと同じです。「アフリカのある民族では、目の前を過去、後ろを未来に例えていて、私たちの捉え方と違う」という課題文の主張を出発点に、自分が何を考えたかを書けばよいのです。

【高評価の解答例(2)】
アフリカのある民族では、目の前を過去、後ろを未来に例える、という話が示すように、異文化の人の考えに触れることで、自分たちの考え方、価値観が相対的なものでしかないと気づかされることがある。私は以前、アメリカにホームステイしたことがあるが、町のスーパーでも無造作に銃が売られていることに驚いたことを覚えている。私の滞在先は南部の農家だったが、隣の家まで何キロもあり何かあってもすぐに助けは来ない。加えてアメリカの犯罪発生率は日本よりずっと高く、強盗なども頻繁に起こる。だから「銃を持つことは身を守るための権利」ということになる。この考えは日本人には受け入れがたいが、アメリカではそのような事情、論理の元に根強く残っているのだということは私にも理解できた。異文化の人たちを理解しようとするとき、自分たちの側の考え方や価値観から相手を見てもうまくいかない。相手側のおかれた背景をよく知り、その論理をよく聞く必要がある。外国の人たちと交流する機会が増えている現代、そのような姿勢はますます重要になってくるはずだ。(以上)

高評価の解答例(2)は、課題文の趣旨を出発点に、それを自分がどう受け止めたのかを、「異文化の人の考えに触れることで、自分たちの考え方、価値観が相対的なものでしかないと気づかされる」と明確にしています。

さらに、アメリカでの体験を具体例として語り、「相手側のおかれた背景をよく知り、その論理をよく聞く必要がある」という結論に達しています。課題文の内容を踏まえて自分の意見を書けており、合格答案と言えます。

このように、課題文への賛否を述べることが必須なのではなく、「課題文の主張を出発点にして自分の考えを書く」ことが、あらゆる課題文付きの問題で有効な方法です。

『落とされない小論文』では、このほか、小論文試験に一発合格する必要最低限の情報を凝縮して伝えています。ぜひ、直前対策に使い倒してください。