大学受験・公務員試験の小論文受験者必読。
「どうやって評価が決まるのか?」
「自分の書いた答案は、どこが悪いのか?」
「どうすれば、合格答案が書けるようになるのか?」
本連載では、新刊『落とされない小論文』の著者が、これらの疑問に明確な結論を出します。本番直前からでも、独力で合格水準まで到達するスキルと考え方をお伝えしていきます。
(構成:今野良介)

課題文を「無視」した解答は論外

大学入試では、「次の文章を読み、あなたが考えたことを述べなさい」という出題がよくあります「次の文章を参考にして、○○についてのあなたの意見を述べなさい」「この文章の論点を踏まえ、あなたの意見を自由に論じなさい」などと、表現が異なることもありますが、どれも問題の趣旨は同じです。そして、ミスを犯すポイントも共通しています。

1つの例題で紹介しましょう。

問題「次の文章を読み、考えたことを述べなさい」に頻発する「致命的な解答ミス」とは?「文章スキル」以前の問題です。

【大学入試の想定問題】
次の文章を読み、筆者の意見についてあなたが考えたことを述べなさい。

日本は格差社会になったといわれるが、そもそも格差があるのは当然ではないか。一生懸命努力した人が、より多くの収入や良い待遇を得られるのは理に適っている。逆に怠けていた人と頑張った人が同じ収入、待遇だとしたら、そちらのほうが不公平ではないか。もちろん、病気や障害などハンディがある人は別で、一定の支援があるべきだが、そうでない人の間で格差が生まれるのは自然なことだ。(以上)

【低評価の解答例】
日本では国民の間の格差が広がっており、格差の解消のために行政は主導的な役割を果たしていくべきだ。たとえば、奨学金制度の充実に取り組むことだ。十分な教育を受けられないと職業の選択の幅が限られ、格差が世代間で連鎖してしまうことになる。日本では大学の授業料が非常に高く、経済的に厳しい家庭の子どもは進学を断念せざるを得ない状況にある。このほか、失業時の手当を充実させたり、病気やけがをしたときの給付金を増やしたりするなど、さまざまな観点からこの問題に取り組んでいくべきだ。(以上)

【高評価の解答例】
私は、筆者の「格差があるのは当然だ」という主張には反対だ。なぜなら、今の日本は努力しても豊かになれない状況があるからだ。日本は正規雇用と非正規雇用の待遇の差が激しい上、企業は正規雇用を減らし非正規雇用を増やす方向に動いている。このため、一度正規雇用から外れると、賃金の安い非正規雇用につかざるを得ないことになる。頑張って働いても豊かになれないワーキングプアと呼ばれる人が増えているが、それはこのような状況から生まれている。努力次第で差がつくということはあっても良いが、その前提として正規・非正規の区別をなくす、両者の待遇差を小さくするなど、雇用制度を公平なものにする必要がある。(以上)

さて、あなたは、【低評価の解答例】がなぜ低評価なのか、説明できるでしょうか。