今日の営業組織に必要なリーダーシップとは何か。企業成長を牽引する営業部門のトップに立つCSO(最高営業責任者)は顧客セグメンテーションから現場の営業担当者のモチベーションまで、あらゆる営業プロセスの構築と維持に多大な時間を費やしている。しかし、これだけに終始してしまっては、営業部門の成功はおぼつかない。

顧客のグローバル化やチャネルの拡大、営業組織の複雑化といった事業環境の変化によって、営業部門の運営はかつてないほど難しくなっている。20業種以上にわたる営業組織の調査とインタビューの結果から、CSOに期待される新たな5つの役割が見えてきた。

営業改革は時代の要請

 今日の営業部門に求められるリーダーシップとは何か。この問いに正しく答えられる経営幹部はほとんどいないだろう。CSO(最高営業責任者)自身も、また営業部門は売上高を伸ばす牽引力であると解釈しているCEOも、「CSOの仕事とは何か」、きちんと理解できていない場合が多い。

ジェローム A. コレッティ
Jerome A. Colletti
アリゾナ州スコッツデールに本社を置くコンサルティング会社、コレッティ・フィスのマネージング・ディレクター。営業の効率化を専門としている。

メアリー S. フィス
Mary S. Fiss
コレッティ・フィスのパートナー。

 実は、営業部門を率いるリーダー、すなわちCSOに要求されているのは、各営業担当者のモチベーションを高めたり、彼ら彼女らをしっかり管理したりすることにとどまらない。これからのCSOは、顧客セグメンテーションからメンバーの査定まで、もれなく管理の行き届いた営業プロセスを構築し、それを維持していくことに多大な時間とエネルギーを費やさなければならないのだ。

 むろん、このようなプロセスは例外なく複雑であり、たとえうまくいっている営業組織でも、プロセス全体をスムーズに運営するには膨大な労力を傾けているのが実情ではなかろうか。現に、多くのCSOが踏み出せずにいる。しかし、1組織を預かる者として、営業プロセスの管理だけに時間をかけるわけにはいかない。

 この20年間、営業部門のリーダーが担うべき仕事はすっかり様変わりしてしまった。顧客からの期待や他部門の責任者からの要求が高まる一方、営業の現場からもこれまでとは異なる役割が求められている。

表「あるCSO氏の1週間」
拡大画像表示

 我々は、20種類以上の業界にわたって各企業の営業組織についてくまなく調査した。これに加えて、CSOとその上司に当たる経営陣、営業リーダーシップを専門とするコンサルタント10人以上にデプス・インタビューを実施した。

 本稿ではまず、事業環境の変化によってCSOの仕事がどのように変化したかについて考察する。次に、これからのCSOに求められる新たな役割について解説する。この新しい職掌は、CSOの成功条件を知るために、あるいはCEOがCSOとして最もふさわしい人材を採用するうえでも役立つはずだ。

 有能なCSOのスケジュール帳をのぞいてみれば、その仕事がいかに複雑化しているかがわかるはずだ(表「あるCSO氏の1週間」を参照)。これほど複雑になったのは、以下に挙げる事業環境の変化が原因である。ほとんどの大企業がこのような環境変化に直面しており、むろんその営業活動にも影響が及んでいる。