つまり消費者物価の上昇は金融政策の効果というより、ほぼ石油などエネルギー価格に左右されている。しかも、2017年の実質賃金はマイナス0.2%になった。緩やかな物価上昇が人々の消費を増やしていく経済の好循環をもたらしているとは、とても言える状況にはない。

 そもそもデフレ脱却が達成できたというなら、なぜ日銀は大規模な金融緩和を続ける必要があるのか、説明がつかない。

「異次元緩和」を推進してきた黒田東彦日銀総裁は再任が固まったと言われているが、金融政策は出口のない「ネズミ講」のようになっている。

 金融緩和をやめようにも、国債の購入を急激に減らせば、国債価格が下落して金利が上昇し、国債利払い費が増加して財政が破綻に向かう。日銀を含む金融機関が巨額の含み損を抱え込む。そして金利の上昇に加え、日銀の株購入の減少ないし停止は株価の急落をもたらすだろう。

 失敗は明らかなのだが、もはややめられないのだ。

生産性上昇で陥る「罠」
GDPが停滞すれば労働強化に

 こうした中で、また政策目標のすり替えが起きている。

 昨年12月8日に、「人づくり革命」と「生産性革命」を両輪にした「新しい経済政策パッケージ」なるものが打ち出された。

 この「生産性革命」も極めて効果の怪しい政策だ。

 そもそも「労働生産性」とは何か。

 分子が「GDP(国民総生産、1年に作り出す付加価値の合計)」で、それを分母の「就業者数×労働時間」で割ったものだ。

 つまり労働生産性を上げるには、分母を小さくするか、分子を大きくするか、どちらかになる。

「生産性革命」の基本となっているのは「働き方改革」で、残業時間規制とともに高度プロフェッショナルという残業代ゼロの裁量労働制を導入しようとしている。

 つまり、「働き方改革」は、分母を小さくすることで生産性を上げようとする動きである。