「全米最優秀女子高生」コンクール優勝!なぜ世界最先端の教育は「学力」以外を重視するのか?世界でいま、最も重視されている<子どもに必要な5つの資質>を伸ばす方法を、一冊に集約した『世界最高の子育て――「全米最優秀女子高生」を育てた教育法』(ボーク重子著)。学習習慣・自分で考える力・回復力・やり抜く力・自己表現力が身につく子育てのエッセンスを紹介します。

日本未上陸の「学力+α」の教育法とは

勉強ができることも大切ですが、それだけではなく国際化多様化が進み、従来の安全や保証が崩れ去りつつある中、ランキング的な成功よりも私が求めたのは真に考える頭を持ち、行動することのできる娘の生きる力を育むことでした。そのためにはテストの点数をちょっとくらい犠牲にしてもしょうがないのかな、と思っていました。

ですが、私は全米一研究機関の集まるワシントンDCという地の利をフルに活用して、従来のテストの点数で測れる高い学力だけではなく、自分で自分らしい人生を切り開ける強い心と真の学力を持つ子を育てる教育法に出会うことが出来ました。

この教育法が娘が、今回「全米最優秀女子高生」に選ばれた大きな要因だと思っています。

「全米最優秀女子高生」にみる日米の教育観の違いとは「全米最優秀女子高生 The distinguished young women」で優勝した、著者重子さんの娘スカイ・ボークさん

自ら考える力を持ち、論理的思考法で問題解決を図り、自分からやる主体性のある子ども。そして折れない強い心を持つ。そんな子どもを面倒な努力なしに、ちょっとマインドセットを変えるだけ、そしていくつかのキーポイントを抑えるだけで育てる方法があるとしたら、興味を惹かれますか?ましてやそれが従来のテストの点数で測れる学力向上にも反映されるとしたら?しかもそんな教育が家庭でできるとしたら?

試して見たいと思いませんか?

レスポンシブ・クラスルームメソッド

私が出会った教育法は「レスポンシブ・クラスルーム」と言います。最近ではその有効性のためアメリカの公立校でも採用するところが出てきましたが、採用する多くはアメリカのエリート校です。すでに中国、韓国、シンガポール、香港、インドなど近隣のアジア諸国ではワークショップを通じて紹介されていますが、日本ではこのメソッドはまだ未上陸です。

1980年代にアメリカで始まった「真の学力」と「非認知能力」を同時に伸ばすことで従来のテストの点数もアップする、というこの教育法の有効性はあらゆるところで科学的に証明されています。

例えば2011年に行われた南部の名門バージニア大学と政府機関の合同調査によると、この方法を採用している学校では子どもの学力が向上するだけでなく、学習意欲が増し、安定した精神状態が得られ、いじめも減り、先生の質も上がって、クラス全体の雰囲気が良くなった、という結果が出ています。

またこの方法で育った子どもたちの多くがアイビーリーグなど全米トップの大学に合格しています。

レスポンシブ・クラスルームが育む二つの領域

レスポンシブ・クラスルームは「真の学力」と「非認知能力」という二つの領域を育みますが、真の学力は「3つの思考法」で非認知能力とは自信、自制心、回復力、責任感、共感力、柔軟性などに代表される社会情緒スキル(Social Emotional Competency)のことです。IQや学力テストで計測される認知能力に対して「非認知能力」と言われ、これらが「+」の部分、「テストの点数では測れない能力」です。テスト勉強では真の学力も非認知能力も育ちません。育つのは満点を取るテクニックだけですが、この二つの領域を育めばテストの点数にも反映されるのです。その仕組みは本著で詳しく説明しています。

アメリカも以前はテスト勉強中心の点数主義を採用していましたが、今では学校の成績も受験も「ホリスティックアプローチ」という従来の学力だけではなく「テストの点数では測れない能力」というプラスの部分も含めて多角的に学生を評価する方法に移行しています。だから満点でもハーバードを始めアメリカのトップの大学から落とされるのです。テストの点数だけではその人の本当の能力は分かりません。またポテンシャルも。分かるのはテストで点数が取れるということだけです。

「テストの点数では測れない能力」を評価する方法は今回娘スカイが優勝させていただいた「全米最優秀女子高生(The Distinguished Young Women of America)」にも反映されています。1958年に始まったこのコンクールは「学力、質疑応答、自己表現力、体力、特技」を評価軸とし、この60年間で80万人近い女子高校生が参加していますが、学力は5つの判断基準のうちの一つでしかありません。他の4つは「テストの点数では計れない能力」です。テストの点数で一番になったから勝てるというわけではない、それプラスがないと。これがアメリカでは普通の評価軸です。特にエリート校では。

変わりゆく日本は止められない

「それはアメリカの話で、日本ではそんな力は必要ない。テストで点数だけ取っていればいい。」と思われるかもしれません。ですが、日本も変わりつつあります。それもトップダウンで。東大の「異才発掘プロジェクト」やソフトバンクの孫社長が私財を投じて次世代を牽引する人材を応援するためにスタートした財団は「異能」というキーワードで若者を応援しています。ここでの評価軸は確実に点数一点張りから変わってきています。そして文科省も。2020年の教育改革で掲げられている身につけるべき3要素には従来の計測可能なこととは真逆の「テストの点数では測れない能力」が挙げられています。「+」の部分ですね。

日本でもこれからは満点よりもそんな能力が重視されるようです。というよりも国際化多様化の進む変化の激しい社会では、テストの点数だけではただ生き延びるだけのSurvivalな人生しかなく、自分らしい人生を謳歌するThrive(有意義)な人生を手に入れることは難しくなるからです。Thriveな人生には自ら考える力を持ち、論理的思考法で問題解決を図り、自分からやる主体性、そして折れない強い心が必要です。

お子さんにはSurvivalではなくThriveな人生を歩んで欲しいと思いませんか?そのためには真の学力と非認知能力というプラスの部分を伸ばすことです。

この二つの能力は家庭で効果的に伸ばすことができます。それも実にシンプルに。今までとちょっとマインドセットを変えること、そしてキーポイントを抑えるだけで十分に育成可能なのです。

次回はテストの点数で測れない能力の一つ、「真の学力」についてです。それは一体何か?について触れたいと思います。

※次回へ続く